IWC1日目続き
続いてクジラの「資源量」について、科学委員会からの報告があった。まず南極海のミンククジラ(クロミンク)だが、これは2000年に「76万頭という数はもはや正しい推定数ではない。もっと少ない可能性がある」とされてから、毎年、来年は出せるとされながら、なかなか出てこない。
クジラの推定数は殺す調査ではなく、SOWERというIWCの目視調査が行われている(船は日本が提供しているのでまずはこの協力に対しての感謝が伝えられる)。
この目視調査について、3つの方法で資源量推定をはじいているが方法によってかなり数の開きがある。今回は予備的結果として2つのモデルが使われたが、今後、合意可能な推定数を出すためのワークショップが提案された。
もうひとつは、これまでの捕鯨時代から蓄積されている耳垢による年齢査定のモデルで年齢査定能力が影響してランダムなエラーが起きているため、今後はそのエラーのモデルを作り、調整していくという報告もあった。
科学委員会議長の報告に対してニュージーランドは感謝をしつつも、南極で何が起きているかということを合意の得られない推定個体数で検討しないで、気候変動など科学的な傾向を見ていくことのほうが重要ではないか、という意見である。
それに対して日本は、南極海で起きているかもしれない変化を致死的、非致死的両方の調査で行うことが重要であるとし、ランチタイムのサイドイベント、JARPA IIの紹介を見てほしいという。
日本は、南極の環境が変化し、ポリニアと呼ばれる氷山の隙間に池ができ、そこにミンククジラが密集しているので、数が減ったという見かけの現象が起きたといっている。また、ほかの鯨種が増えてミンククジラを氷辺に追いやっているというのも繰り返される説である。
私はしろうとかもしれないが、南極海での環境変化を見つけたということを日本政府が繰り返し重要なことのように言うのを聞くとちょっと恥ずかしい。生態系というのはいつでも変化しているもので、それ自体は問題ではない。問題なのは、人為的な行為が生態系を急激に変化させるような場合だと認識している。そういう意味で言えば、日本が「ミンククジラが(ウサギだかゴキブリのように)増えてほかのクジラが増えない」といい続けたのに対して、ほかの鯨種も増えていて(といっても捕鯨以前まで回復しきれているわけではないらしい)、再びバランスを構築しようとしているかもしれないし、ニュージーランドが言うように、南極の環境で大きな問題はまず気候変動かもしれない。
ミンククジラ(あるいはナガスクジラ)をとりたい欲望と混同するのはやめてほしい。
次は北太平洋ミンククジラで、現在合意されているO-stockとJ-stockのほかの系群に関しての追加情報が必要とされ、日本、韓国からの情報のほか、ロシア海域での情報が必要とされた。日本、韓国でのJ-stock混獲問題が指摘される。特に、最近発覚した韓国での密漁問題で、この個体群の捕獲が報告された。
韓国は、地域保全管理に務めると発言、科学者を増やし、関係国とも協力して共同調査をすると発言。
ロシアは、科学委員会の当該海域における調査の必要性についての強い勧告に対し、正式に国に対して要請してほしいと答えた。
日本からはロシア海域での調査が出来たことに関してロシアに謝意を表明し、コンスタントな継続を要望した。
それから、定置網による混獲では、定置網の設置は昔から同じ場所で行われ、定置網そのものは減少傾向になることを強調し、混獲がなぜ増えているか時系列にしたがって調査するとした。
午後からは南極のザトウクジラ。南極で餌を食べるザトウクジラは、その繁殖海域をアフリカ大陸沿岸や南米、南太平洋に持っている。
最初はアフリカ大陸の両側(西と東側)でのそれぞれに存在する繁殖系群の調査の報告。西側で唯一確認されているのはガボンだが、東側は系群の関係が複雑で、今後写真IDやDNA調査などさらに行う必要があるらしい。
南米でもルートが少しずつだが解明されており、これには南米の科学者が調査に参加しているということ。
南太平洋やニュージーランド、オーストラリア東海岸での調査も進んでおり、回復が目覚しいところもあるが、いまだに十分回復できないまま小さな個体群がいくつも存在している南太平洋諸島のようなところもある。
これらクジラの繁殖系群が南極のどこで餌を食べているか、というつながりの調査が重要であり、日本が闇雲に南極で捕獲することに大きな反発がある根拠となっている。
そういえば映画「アース」では、南の海で生まれた子クジラを連れて、はるばる南極海に旅をするザトウクジラが紹介されていたが、「繁殖率何%」という冷たい数字で「科学」のすべてを伝えていると思っている日本政府の傲慢さにはため息が出る。
stockという言葉は「資源」だけではなく、家系とか種族とか言う意味もある。「ミンククジラは76万頭いますよ」とか「魚を何トン食べている」とか言う数字を挙げて、日本だけが科学的だと「信じている」科学音痴のメディアの人もなんとかならないものだろうか?
« チリIWC報告第1日目 | トップページ | IWC-2日目 »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント