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2008年6月 5日 (木)

不思議、不思議

 捕鯨関連でこれまで噂されていたようなことが明るみに出たと思ったら(だれかが明るいところに引っ張り出す必要があったと思う)、その反応が、明るみに出す方法の是非に限られてしまい、なかなかいびつで残念だった。

 調査という科学信仰がとても篤くて、それにけちをつけるのはとんでもない、と考えている人は、調査の結果を個人の既得権でかなりの量を持ち出していることに疑問を抱かないのだろうか? 船の上で’立派に’調査、研究をした「かす」だからかまわないのだろうか? 
 あるいは、税金が使われている調査の産物を「お持ち帰り」することに対しても、すごく日本的に融通を利かせてしまうのだろうか。
 シーシェパードのときも感じたが、やり方を批判するのならば、同時に何で「調査」が本当に必要なのか、適切なものなのかという疑問がないのだろう?

 検察庁の捜査が行われるということだったが、結果のないうちに、また当の日新丸は、今度は北西太平洋に向けて出航しようとした。
そして、痛ましいことに、乗組員の方がひとり、自殺された。

 以前、日新丸が火災を起こした(1999年だったっけ?)時も、直後に自殺された方があり、その原因はうやむやでよくわからないうちに終わってしまったし、今回のこともほんの一部の地方紙のみが扱っただけだった。
 日新丸は、まだ出航はしていないが、水産庁は、捕獲調査をしないという選択肢はないという。

 本来ならば、持ち出し問題をちゃんと解決してから、調査そのものも検討するというのが普通の感覚なのではないだろうか?

 一方で、今度は、アイスランドとノルウェーからの鯨肉輸入問題が発覚した。これも、BBC,AFPという海外メディアの発信で、それがなければすんなりいったのだろうか?

 経産省はそんな輸入は連絡されていないというし、水産庁は「正規の輸入なら捕鯨班を通すはず」という。
輸入申請というのは、税関を通る時でよかったっけ?だいたい、輸入されるとされるナガスクジラもミンククジラも
ワシントン条約で国際取引を禁じられている種だが、3つの国がそれぞれ留保という手段を使っているので違法性はない。しかし、ワシントン条約対象種は輸出国、輸入国双方の当局が管理するものだ。

 2000年のときは、ノルウェーからの輸入は、脂身にたまったPCBが、ノルウェー国内では食べるなという警告が出されていることが明らかになるなどして中止された。ベーコンでも上物はデパートなどで100g4500円などの値がついており、ノルウェーは捨てるより、日本の業者に捨て値で売ろうという魂胆だったから、輸入業者にとってはこんなにおいしい話はなかったろう。
 
 しかし、当然ながら、安い鯨肉が入ってくれば、今でもだぶついている肉の行き場がなくなるのは目に見えている。沿岸で捕獲しているはクジラの肉の値崩れも問題となるはず。

 そんなこんなで、その後これまでに幾たびか輸入の話は出たが、立ち消えている。

 今回は、何年も前に廃業した水産会社の名義を借りて、2週間前に新たに作った会社が輸入元だという。確かに輸入は違法ではないかもしれないが、道義的問題は依然として残っている。
ワシントン条約における留保措置を悪用したそのような業者を取り締まる方法はないものだろうか?

 問題が起きたとき、上っ面だけ見ないでなぜなのか、と思う正常な関心がメディアにも薄い。自分の胃袋と攻撃対象を憎むことで、内側にこもった議論をするのはまったく生産性にかけるが、どちらかというとメディア自身がその線上にいるのだから、じれったい。

 先日もある国連職員と話したときに、捕鯨問題はもう終わりというのがその人の認識だった。しかし、私たちが国際的にはすでに小さな問題でしかないクジラ資源利用問題をいまだに無視できないのは、それが日本の水産、あるいは水産関係者を硬直させてしまっているからなのだ。

 これまでの人間の乱獲や開発、汚染、混獲、不適切な漁法などによって、世界の水産資源が危機的な状況にあることは論を待たない。
 しかし、日本のある一部の水産系の人たちは、クジラに固執することがまるでこの漁業資源枯渇の答えであるかのようにいう。

 つい最近もクジラ放牧などと、まったくお笑いとしか言いようのない意見が再浮上してあきれた。「魚を大量に食べる」とされるクジラの「放牧」がもし(不可能だと思うが)可能になったとして、クジラを飼育するはずの魚を人間が食べるほうがよっぽど効率はいいし、海洋環境にもいい。

 沿岸の再生を真剣に考えるべきときに、クジラを食べる話ばかりで熱くなるというのはいただけないが、一方で、海外に任せて国内で議論をすることを捨象している、あるいはまったく関心がない日本の人たちにはもう一度真剣に考えてほしいと思う。

 

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