« 続き | トップページ | イルカについての内外の認識の差 »

2008年3月26日 (水)

日本沿岸のシャチのこと

 今日、水産庁のHPの中の「国際漁業資源の現状」が更新されているのを発見。まだ全部をちゃんと見たわけではないが、気になっていたシャチのところを早速見てみて驚いた。
 昨年の11月に行われたシャチのシンポジウム(シャチシンポジウムに関してはブログ参照)の後の懇親会で、執筆担当の宮下富夫氏に1997年のいわゆる生け捕りの数が間違っていることを指摘したところ、更新する予定なのでそのときに訂正するといっていたので、時々のぞいていたのだ。

 1997年、5頭のシャチが「学術目的」で捕獲された。その年、実は、NGOの行った鯨肉調査で、シャチの肉が発見され、水産庁もその事実を隠しようもなく、とりあえず1頭だけ捕獲を認めてきた。今回の報告ではそれが削られ、たんに生け捕り5頭だけになり、違法性が疑われる1頭はないことになってしまった。

 さらに、どうしても解せなかったのが推定個体数である。昨年まではHPでは太平洋側に目視による他種との発見比率から、およそ1800頭、個体識別などもあわせてオホーツク側に721頭(今回は北緯20℃~40℃で745頭)という数字が出ていた。それが、今回、元データは1992年~1996年と変わらず古いものを使い、西部北太平洋の北緯40度以北で7,521頭という数字がでているのだ。

 11月のシンポジウムにおける最新とされる生息調査報告では、こんな数字はまったく話されてはいなかった。
 どころか、日本沿岸の太平洋側では目視調査でもめったに発見されていないことが報告されており、オホーツクでも多く発見されているのはロシア海域だということが明白であった。研究者によっては、アリューシャンをまたがって移動しているものもいるのでは?と考える人たちもいる(アルビノシャチがアラスカで最近発見されたので、そうした調査も進む可能性もある)。この数字は日本沿岸ではなく、実はロシア海域のことをさしているのだろうか?
少なくとも20℃以南は数字的になくなってはいる。
しかし・・・
それにしても数が多すぎるような気がするのだが???

 北米西海岸では、北海道の一部で見られる以外、目撃情報がいずれもまれな日本と違い、夏の時期にはオルカ(シャチ)ウォッチングが盛んなのは周知の事実であるが(私自身もアラスカでほんのわずかの時間に3回、別々の小さな群れを見た)。かつて、北米西海岸では数千頭のシャチがいると「信じ」られていたが、実際の個体識別の後ではほんの1000頭前後だとわかった。
 
 これまで、日本沿岸ではシャチの繁殖海域、索餌海域はもちろん、どこをどのように移動しているのか、どのようなエコタイプがいるのかまったくわかっていないにもかかわらず、いまさら古いデータからこの数字をどうやってはじき出したのだろうか。

 同じ懇親会のときに「とにかくたくさんいるんですよ」という某大御所の言い分をなんとしても言い張る必要があったのだろうか?
だとすればそれは捕獲を正当化するためのものではないのか? 

業界とは独立した科学機関による調査とこれまでの調査・研究に対する評価が早急に求められる。

« 続き | トップページ | イルカについての内外の認識の差 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。