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2008年1月27日 (日)

食の安全性とクジラ

座礁クジラの利用に関するパブリックコメントで、クジラを流通させるにあたってどこが安全性を管理するか、その地域の保健所なり公的な機関がかかわらないと、以前北海道であったような集団食中毒の恐れもあるし、沿岸のクジラには化学物質も貯留しているのではないか、という意見を出した。
それに対して、水産庁担当者は、安全性を確認するのは流通業者だと答えた。理由としては、もし万が一のことがあったら、自分たちの責任になるから、ちゃんとするだろうというようなことだったと記憶している。

で、昨日、知人が教えてくれたニュースを見て、懸念していたことが起こったことを知った。

以下貼り付け_________________________________
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http://www2.knb.ne.jp/news/20080125_14425.htm
2008 年 01 月 25 日 21:15 現在
クジラ肉の生食に注意を
 氷見市内のホテルと民宿で起きた集団食中毒で、県厚生部は食事で出された
クジラの刺身から病原性大腸菌が検出されたと発表し、現在、流通している氷見
産のクジラ肉を食べる際には生で食べることを避けるなど、注意するよう呼びか
けています。

 今月19日、氷見市内のホテルと旅館でそれぞれ刺身などを食べた男女合わせ
て45人が、下痢やおう吐などの食中毒の症状を訴えました。

 県厚生部が原因を調べていたところ、食事で出されたクジラの刺身と患者から
病原性大腸菌が25日、検出されました。

 このクジラは患者が食事をした日に氷見漁港に水揚げされたもので、肉の一部
が汚染されていた可能性が高いと見られています。

 このため、県厚生部では現在、流通している氷見産のクジラ肉を食べる際には
生で食べることを避ける、十分に加熱する、など注意するよう呼びかけるととも
に高岡厚生センター氷見支所で26日以降、健康相談を受け付けることにしました。
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混獲クジラの商業流通は、年間100頭を超える。鯨類研究所は、そのサンプルをもらい、1検体10万円でDNAをチェックし、流通を許可している。しかし、販売前の汚染調査については、義務化されていない。

混獲クジラだけではない。沿岸の業者委託の調査捕鯨でも、年間120頭のミンククジラが水揚げされ、生肉として流通している。その工程における細菌や化学物質の汚染調査が行われているフシはない。
今回のように、明らかな細菌の汚染であって、原因が突き止めらる場合ばかりではない。水銀やPCBs,ブルセラ菌といったものはすぐにその結果がでるというわけではない(よほど高濃度であれば別だが)。

今回も、「氷見産のクジラの生肉」だけ注意して、ほかの場所での同じ条件での混獲肉などに注意が向けられないのはなぜなのだろうか?

使用禁止農薬の使用や賞味期限などではかなり厳しく対応するのに、なぜクジラ肉に関しては神経を使わないのかなり不自然な感じもする。

一部のすき者だけが食べるというのなら、もしかしたらそれは自己責任の範疇なのかもしれない。
しかし、このところ、鯨研などは学校給食へのクジラ肉の導入を非常に熱心にやっている。最近も鯨研の勧めで横浜市の87の小学校でクジラ肉給食が行われたという記事がでていた。
クジラを食べる文化の育成という点では、仕上げにクジラ肉をみんなで食べる鯨研が実施しているクジラ博士の出張授業でも同様である。
大型野生動物の肉を食べるようにと子供たちに学校教育を使って勧めるのも異常だと思うが、以降、子供たちの食の選択肢の一つとしてクジラ肉が入れられることを意図した計画だと思うので、安全性という点からも、こうした安易な導入はやめていただきたいと思う。

2008年1月17日 (木)

またまたわからない2

派手な行動に隠れてしまったが、ちと気になるブログがあった。何回か紹介した太地の美熊野政経塾ブログなのだが、太地との「共同研究費」ということで年間150万円×2年間の費用がどのように使われたのか、という報告だ。

「共同研究」という以上、研究対象があって、ゴールがあり、共同で行うことの必然性もあるだろう、と思うのがしろうとだ。しかし、ブログを見た限りは、どうもこの共同研究には特定の研究対象はなく、またゴールなどもないようだ。もしかしたら、研究計画書のようなものがあるのかもしれないが(あってしかるべきだが)、項目を見ると、研究対象らしいものは「ザトウクジラの飼育の可能性}(そんなことが出来るの???)、スナメリの調査、大型クジラの骨格標本作り、さらには中国の漁業視察、といった具合である。門下の卒業生の卒論のためというものもあって、特定のものではないようである。
「共同」の相手の太地町のほうは中国視察以外はあまり共同で研究してもいないように見える。また、本来は所属している大学の備品となるような品目もある。大学の研究費が少ないところを補うために先生たちはこうした方法を使うのだろうか?本来はきちんとした研究費がしかるべきところから捻出されるべきだろうとは思うが、たぶん、そうした苦労を支えるほど、太地は太っ腹なのだろう。あるいは、お金がよほど余っているか、はたまたそのことでそれ以上のメリットがあるのか、とかんぐってしまうのはいた仕方ないのではないか。

もうひとつ、太地のかかわる「共同研究」がある。名古屋港水族館とのシャチに関するものである。以前にも書いたように、名古屋港水族館は、2003年に太地くじらの博物館から1997年に太地で捕獲され、同館で飼育されていたメスのシャチをブリーディングローンで借り受けた。その費用は1億2千万円という話だが、そのほかに太地との共同研究費が少なからず支払われているということである。

昨年11月のシンポジウムでの研究発表では、個別の発表はあったものの、共同研究の内容というものはなかった。こちらは太地がお金を貰っているが、共同で何をしているかが不明ということではおなじである。
「共同研究」というのは一体なに?

またまたわからない

久々に、捕鯨関連記事が主要各紙に大きく掲載された。「海の羊飼い」さんたち・・・・・なんとも複雑な気持ちである。
双方の命を危険にさらす行為であることはもちろん、それが解決になるとは思っていないが、それにしても自分自身のことを考えたら、いくら貰っても、小さなゴムボートで、しかも極寒の地で、盛大な放水の歓迎を覚悟で立ち向かおうとは思わない。侵入した二人はそんなに若いわけでもないのに・・・・・

一方で、こうした行動については、大臣や水産庁の彼らへの非難コメントはあるが、いわゆるコメンテーターは何も言っていないようだ。普通は、彼らの行為は許されないものではあるが・・・・などという一言があるようだが、今のところはない(まあ、いつもの’コメンテーター’さんたちはきっとおおはしゃぎなのだろうけど)。

オーストラリアの連邦裁判所が、日本がサンクチュアリ内でクジラを殺すのは違法だという判決を出したということもあり、彼らの行動への批判は別として、日本が南極海で捕鯨をしていることが世界ではどのように見られているかを少しは考えてもらいたいものだ。

最近では、「食育」のなかにクジラ食が入れようという動きがあり、スローフードを提唱している人がクジラ食を勧めいたりするようだが、南極まではるばる捕りに行くののどこがスローフードの考え方に合うのだろう?

大体、竜田揚げという食べ方は、戦後の引揚者が中国の料理をアレンジして伝えたものだともいうし、台所をあずかる者なら、しょうがとしょうゆでくせや臭みを消し、衣をつけて揚げることで食べやすくするのが食費を安く上げるための常套手段であることは先刻承知のはずだ。

「クジラ肉通」の人たちがおいしいと思うらしいナガスクジラの尾の身は、鯨研からの卸の段階で徳用でも12、000/kgのようだから、これはすでに「食育」ではなくグルメだし。

いろいろと反捕鯨を批判している人たちも、調査の内容ではなくひたすら「食べさせろ」といっている。南極まで税金を投入して、調査と称して肉を持ってかえるというのはやっぱりおかしい。

しかし。
今回の彼らの「勇敢な」行動は、どこに問題があるかを日本国内では逆に隠してしまう可能性があるのが残念ではある。

2008年1月12日 (土)

わからない2

日本捕鯨協会が日本が調査で捕獲しているクジラの資源量を付け加えたということを知り合いに教えてもらった。
http://www.whaling.jp/shigen.html

このページによると、南極のミンククジラの数が442,000頭になっている。調査海域のみの数だろうか?
推定数がまだ明らかになっていないのに?

ついでに気になったのは、北西太平洋のミンククジラについて。25,000頭になっているが、日本沿岸には2つの系統群が存在していることは1993年ごろから合意されているはず。いわゆるオホーツク系統群(O-stock)と
日本海側の系統群(J-stock)で、日本海側の個体群は数が少なく(5000頭くらい?)、日本と韓国の定置網混獲(韓国では密漁もあるといわれる)で混獲されているという。
生息海域は一応異なるものの、季節によっては混在する場合もあるとされ、IWC会議での北西太平洋での調査捕鯨および沿岸捕鯨に関する問題点のひとつとして、このJ-stockの捕獲問題が毎年のようにあげられている。特に、業者委託の沿岸での調査捕鯨では、その可能性が否定できないと聞いた。
昨年、その混獲されている割合について水産庁に聞いてみたところ、「遺伝子調査の結果については鯨研の知的財産だから答えられない」、といわれた。つまり、まったく混獲されていないわけではないということだと私は思った。

南極のナガスクジラ、ザトウクジラについては一応わかっている段階での系統群についての注がある。どうして、北の調査海域に関してはその注がないのだろうか?もし、捕鯨推進する人たちが自分たちの正当性を胸を張っていえるというなら、希少な個体群がいて、そこから捕獲されている可能性もあるということをなぜ伝えないのだろう?

2008年1月10日 (木)

シャチ捕獲の行方は?

昨年早々に、太地の町長がシャチを群れで飼育したいという意向だという情報が入った。水産庁も「前回捕獲から10年たってそろそろその研究成果も明らかになるころだから・・・」と暗に捕獲を認める発言をする、名古屋港水族館は、冷凍精子の入手に難儀をし、それではと(自分たちだけが悪者にならない限りという条件で)野生シャチ導入に意欲を見せた。で、それまでそっぽを向いてきた水族館同士でちゃんと情報交換しましょうよ、という水産庁の勧めもあって、三重大学の吉岡教授のもとでこれまでの研究成果を集大成することになり、11月にはその成果発表のシンポジウムも行われるという捕獲環境の整備が着々と進行した。
しかし、一方9月にはいって1997年捕獲個体の生き残りの2頭のうちの1頭-アスカが死亡、研究内容そのものも繁殖データ以外にめぼしいものはないという思惑外れの事態が起きた。

さらに、11月のシンポジウムでは、日本沿岸のシャチの生態についての調査発表も行われたが、これによるといくらO博士が「シャチはたくさんいる」と強弁しようが、太平洋側のシャチの個体数はわからず、トランジエントタイプのシャチが移動するだけのように見えた。実際に、遠水研の責任者はオホーツク海での推定個体数721頭と太平洋側の他種からの類推であるところの推定数1600頭がダブっている可能性もあるということを認めた。
さらに「日本産シャチ」とはいっても発見情報は道東からカムチャツカに偏り、ロシアとの関連性も考えられ、「日本産」という独立した遺伝子を持つものが果たして存在しているのかどうかさえわからない。
シャチのタイプ(魚を食べるのか、海生哺乳類を食べるのか)についても、もちろん、繁殖海域についても十分把握できておらず、捕獲して儲けることより先にしっかり調査してくださいよ、といいたいところだ。

しかし、先だって太地の美熊野ブログを見て暗い気持ちになった。11月に行われたシンポジウムで音頭を取った研究者の多くが太地と金銭的にもつながっていたからである。
http://park.geocities.yahoo.co.jp/gl/mikumanoseikeijuku
一応、シンポジウムは日本のシャチ研究の集大成のような形になっていたから、もしシャチの捕獲を検討するならばこうした人たちは主要なメンバーとなることが考えられる。
さらに悲観的な言い方をするならば、直接太地とはつながっていない研究者といえども、日本の鯨類研究の「権威」というべき彼らに楯突くことはあまり想像できないのだ。

わからない・・・

昨年は、安倍内閣から福田内閣へと変わる中でさらなる政権内外での不都合が明るみに出て、日本が民主国家として機能していないことをつくづく感じさせられた年だった。
「美しい星50」などというコトバが作られたものの、残念ながら「環境」はお飾りとして使われたに過ぎないように思える。
クジラについても不穏でおかしな年だった。
まず、2月の「正常化会合」から始まった。参加国36カ国と民間20団体、情報開示による政府の会議費支出は76万円。2006年のセントキッツ宣言を受けて、形ばかりやってみたものの、だからどうなの?という結末。
会議の最終日に、日新丸火災の情報。事故は会議では明らかにされなかったが、後にたいへん残念ながら事故により犠牲者が出たことも判明した。1999年に次ぐ電気系統の火災と聞いたが、3ヶ月後には北西太平洋にもでかけていったのは驚いた。
この調査で、火災とは関係ないが、また一人乗組員が不慮の事故でお亡くなりになった。

アラスカ会議ではまた立場の逆転が起こり、日本はとうとう会議席上で脱退をほのめかした。確か、日本代表の森本稔氏はIWC副議長だったはず。副議長は次の議長だという話だから、自分が責任の一端を担う会議で、せめて責任をとって副議長の座を辞すならばわかるが、日本代表団の中にすわって日本に同調するだけ。しかも、彼は会議後に、再度天下りを果たして日本鯨類研究所の所長になった。議長はどうする?

日本政府は、昨年末の12月21日になって、とうとうJARPA IIでのザトウクジラ50頭捕獲を今回は見合わせることにした。もともと、ザトウクジラは業界にとってそれほど魅力のある商品ではないから、何らかの取引に使うつもりではないのか?と思っていたが、その先は不透明。この先どうするつもりだろうか?

当日は調査捕鯨に関して、調査捕鯨再考をという意見を携えて、31カ国大使が外務省を訪問したが、それについてメディアの注目はなし、国内の関心はなし。

特に人気の高いザトウクジラ捕獲をめぐって、オーストラリア国内で反捕鯨の勢いがヒートアップして、とうとうオーストラリア新政権が調査捕鯨を監視する船を出すことにした。
で、オーストラリアの反応を指して「白豪主義だ」と非難するビデオを作成した人がいて、ディンゴやカンガルーの虐殺場面を流して(見た)視聴者のクソ投げ合戦(失礼)が始まっているらしい(見ていない)。
動物福祉の観点から映像のような殺し方には嫌悪を覚えるが、だからといって映像を作った人がいうような差別問題というよりは「自分たちだって悪いことしてるのに、おいらだけが悪いと言うのは差別だ」というような不毛な子供じみた喧嘩を売っているだけに見えてしまった。差別的で乱暴な人はきっとオーストラリアにも日本にもいるだろう。しかし、そのことを批判することと、日本がはるか地球を縦断して、遠い公海まで出張って行って捕鯨をするのが正当化されるかどうかという議論とはテーブルが違うのではないだろうか。

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