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2007年12月10日 (月)

これも「口利き」?

 シャチシンポからだいぶ時間がたってしまったので、記憶がすっかり失せる前に報告を終わらせよう。

 第3部は公募によるシャチ研究であった。やはり、飼育化の報告よりも断然面白く、第2部のような居眠り組みは少なかった。
まずはじめは、鯨類研究所の松岡耕二氏の鯨類捕獲調査での発見である。主目的は大型鯨類ではあるが、大型鯨類と同様の目視記録を作成している。識別用ではないが、ニタリクジラを襲うシャチやアルビノ個体の写真など、興味深かった。もし識別用の写真を撮るつもりならできないこともないのではないか、と思った。

 次の小笠原では、諸島海域でのシャチの目撃情報(漁業者やウォッチング船による)等の発表があった。しかし、出現頻度は低く、定期的なものではないようで、同海域での定住的な個体群は存在しないと思われた。

 北方4島の調査は1999年から2005年までの5年間、NPO法人北の海の動物センターが実施した。調査の結果では、シャチの分布は択捉島のオホーツク側に出現が集中していたという。4頭以上の群れでは82%に新生仔が含まれていたということも報告され、オホーツク周辺での繁殖の可能性は高いのかもしれない。又、この出現の集中する海域は、海生哺乳類の分布と高い確立で一致していたということであり、発言者の笹森琴絵氏はこの海域で見られるシャチがこれらの海生哺乳類を餌とするトランジエントでは、と指摘した。ここではせっかく写真による識別も行われているのに、ロシアとの関係で今後の調査継続は微妙であることが残念だった。ロシアとのつながり、特にカムチャツカ海域の調査との適合など、早急に関係者がデータを交換すれば、同海域のシャチの生息情報を充実したものにできるのではないだろうか。
 どうも、政府関係の方たちのやっていることは、こうした糸のほぐれた端が差し出されているのに、そこからともに解きほぐしていこうというような柔軟性に欠けるようだ。

最後は、2005年に北海道の羅臼町で流氷に閉じ込められ、死亡した9頭のシャチの胃内容物の報告であった。これらのシャチに胃内容物からは、氷上で出産する2種のアザラシと亜寒帯に分布するイカが発見されており、鯨類の痕跡はなかった。日本沿岸でのシャチの食性研究は捕獲のあった50年前からほとんど進展がないことから、シャチの基礎的な生態知見をえるためにも目視情報や自然死亡個体の調査が不可欠であるとし、くれぐれも(捕獲は)慎重に、という言葉が添えられた。
 わずかではあるが、こうした地道な調査が水族館飼育よりも今後のシャチ研究にとって必須であると思われる。

 最後の総合討論は、タイトルが「シャチ研究は如何にあるべきか」というものだったが、時間がなくなったので(方向性を出すような段階ではないということもあり?)、座長の加藤秀弘教授によって指名された人たち中心の意見発表になった。
 1部の座長であった大隅清治氏はシャチ研究に関して系群や食性については欠けていることを認めつつも、カナダやアメリカの研究と比べて沖合い調査で有利だとし、日本の場合は利用する中での研究をすべきとした(彼は後の懇親会で「沿岸調査は大学やボランティアがやればよい」という見解を示したが、シャチの生態解明を本気で考えているのか、非常に疑問に思った)。
 これに、座長の加藤氏は沿岸域が非常に弱いことを再度強調、北方4島調査はその補完でしかないとし、分布域や動態の調査の必要性を言い、その可能性を研究者に質すとともに、倫理的な側面からの調査のし辛さを付け加えた。加藤氏の第1部に関する結論は、シャチがダイレクトな漁業資源ではなく、エコシステムマネージメントの一環として考えるべきというものだ。

 一方、第2部はもっぱら「シャチの生理を知る」ところに始まり、繁殖がゴールであるような理解で進んだ。今後の方向として、第2部座長の吉岡氏から希望としては飼育個体から更なる調査を行いたい旨の発言があった。
しかし、一方で会場から出された質問「人工繁殖によって得られるものは何か。どの程度の機関、リソースによって目的を達するつもりか」などの質問についての明確な答えはなかった。第2部と捕獲の正当性との関連はまったく見られなかったのは言うまでもないが、議論の〆としては特別捕獲による学術研究としての成果を集める中で各園館のセクショナリズムを打破できたという部分的な評価で終わったことは興味深い。協力体制といっても、この間の流れを見れば次回捕獲を可能にするため、水産庁の指示に従った一時的な歩み寄りに過ぎないと思われた。

 捕獲に関しては、「リスクがあり、覚悟が必要」という雰囲気が全体に見られた一方で、大隅清治氏の発言「10年の蓄積を踏まえて繁殖という目的を達成してほしい。宮下氏の報告にあるようにシャチはたくさんいるので利用し、次のステップに進むのがこの10年の成果を生かす道。水産庁も実現に向けて努力してほしい」というような意見が際立っていた。ちなみに彼は太地くじらの博物館の名誉館長である。こういうのも、規模は小さいものの、今問題となっている「口利き」の1種ではあるまいか、と思ったことだった。

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