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2007年8月23日 (木)

海の生物多様性の保全を

 久々に思いついて、orca liveを見る。映像はないが、シャチの声が運よく聞こえてきた。はるかな夢の国からの便り。シャチ好きを自認しているわけでもないが、確かにこの声は心と体をくつろがせる作用がある。        

 ついでに心配なニュースを書き込みで確かめる。彼ら、北の個体群のくつろぎ場、生態系保護区のロブソンバイトでのタンカー事故でディーゼルオイルが漏出し、8kmにも及んで油汚染が起きている。シャチたちの生活圏のど真ん中であり、毎日のように、彼らはその周辺に出没しており、今後、どのような影響があるかは不明とのことである。何でそんなところにタンカーが?と憤りを覚えると同時に、聞こえる声にもあまり近づかないでほしいとはらはらしてしまう。

 日本の沿岸におけるシャチの生態はいまさら言うまでもなく、あまりよくわかっていない。オホーツク海周辺における推定数が出ていることと、いくつかの個体群がきっとあるだろう、くらいしか日本の研究者たちも言っていない。太平洋の推定数は、ほかの種の目視調査からの類推で、どこにどのように生活しているかはわかっていない。
 周辺での油漏れ事故に関しての情報は結構頻繁に入るが、その影響についても水鳥に関しては比較的きちんと調査をしている団体があるので分かるものの、鯨類に関しては情報は「見えない」。
 水産庁は、どれだけ捕獲できるかという点のみ関心があり、ほかの点についてはまったく役に立たない組織だ。                  
 今、環境省主導で、第3次生物多様性国家戦略の策定作業が進んでいる。これまで、環境省が管轄できなかった海の生物多様性について、今度こそ環境省は前向きの対応をしようとがんばっている。
 しかし、それに対しての水産庁の反応は鈍いようだ。これまでも、彼らは漁業そのものが生態系に依存するもので、持続可能な利用によって成り立つ業だとし、ここまでの反省や問題の指摘はないに等しい。逆に、漁業活動は日本の国民に不可欠なものだろうと開き直っている感まである。
 人間が利用する以外の生き物調査には熱心でないから、どのような生物が生息しているかというデータはないようだ。資源利用に役に立たない種についての保全はもちろんありえない。
 推定個体数が100頭前後というニシコククジラについてもまだ、水産資源保護法の適用を受けられないし(受けても対して状況はかわらないかもしれないが)、シャチだって、多少の調査があるのは捕獲したい人たちがいるからでは、と疑う。

 一方で、クジラが人間の魚を横取りしているのではないか、という深い被害者意識は消えず、今回の水産庁の書いた案にも「鯨類等の大型生物による有用水産資源の捕食の実態を把握し、その影響緩和の取組を推進します」(前はクジラが有用魚類を食べすぎるので餌生物調査が必要とあった)という文言が残っている。何によって影響を緩和するのか知らないが、クジラ類への保全についての言及はないので、この一文は奇異でさえある。

 国境を越えて移動する種を国際的に保護するためのボン条約にはクジラが入っているから、と反対し、いつまでたっても批准できない。

 海外ではどうかは知らないが、国内では明らかにクジラは「差別されている」。

 こうしたいささか常軌を逸した現状についての責任は私たち日本人一般にもある。これから末永く、海を便利な冷蔵庫扱いしたければ、もっと丁寧に沿岸海域の調査を行い、埋め立てや汚染などから海の再生を行い、守るべきは守り、利用すべきは利用できるようにきちんと管理して生物多様性の保全に努めなければならないが、どうやらそのことを私たちが繰り返し言っていかなければ変わらないようなのだ。

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