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2007年6月12日 (火)

アンカレッジ日記(2)

アンカレッジ報告(2)

 順を追って報告することにしよう。
私たちがアンカレッジに到着したのは、会議が始まる前日の5月27日。報告されていたほど寒くはなく、あちこちで白いバイカウツギのような木の花やタンポポなどが咲いていた。科学委員会に参加した人たちによると、来た当初は木々もほとんど裸同然だったということである。道端のスギナもツクシも日本の3倍はあろうかという大きさだが、植生の感じは日本と比べ、あまり違和感はない。町の3方を雪をいただいた峰々が取り囲み、一方は建物の間から海がみえる。ダウンタウンといっても、広く開発したところに建物を建てるのが追いつかず、ポツン、ポツンとまばらに高層ビルが立っているという風。広い道路を行きかう車はほんの少し。
 会場のキャプテン・クックホテルは、アンバー色のレンガ造りのどっしりした建物で、正面にやや控えめにIWCのバナーが上げられている。そこらじゅうに、やたらと警備員の姿が目立つ。登録を済ませ、顔写真つきのタグと分厚いアラスカの写真集などの入ったアメリカからのIWCバッグを受け取り、今年もとうとう来たな、という実感がわく。

 翌朝、会議場の前には青い衣装をつけた先住民の人たちがうちわ太鼓を持って集まっている。開催のセレモニーの用意をしているようだ。
10時から始まった会議は、昨年議長に選出されたビル・ホガース氏のあいさつ、アラスカ先住民の長老であり、牧師のあるアルバータ・ステファン師の祈りと続いた。それから、アンカレッジ市長、アラスカ知事、そして、上院議員と持続可能な利用と保全を両立させるアラスカの試みを自画自賛し、そのあと、車椅子の古老を先頭に厳粛な面持ちの先住民の人たちが会場に登場、アラスカ先住民と支援するマカ、ロシアのチュクトカの人々によるパフォーマンスが繰り広げられた。ちなみに、今回アメリカは参加者数で日本をしのいだ!(70名。日本は65名)

コーヒーブレークを挟んで新規加盟国のオープニングステートメントが述べられる。今回はエクアドル、スロベニア、クロアチア、ギリシャがそれぞれ保護の立場からの意見を述べた。エクアドルは93年にIWCを脱退したが、このほど、ラテンアメリカの国々主導で開催された南半球のクジラ保護のための会議に参加し、クジラの非致死的利用の促進をうたった「ブエノスアイレス宣言」を支持する立場から意見を述べた。クロアチアは、2005年、世界で始めてバンドウイルカのための自然保護区の設立を成功させた国だ。
ラオスは、人権の正当な利益に基づく資源の管理、利用を訴えた。今回は、格段に捕鯨推進を訴える新規参加国が少ない。それだけでなく、はじめの事務局からいくつかの国が参加費を支払っていないため、投票権がないという告知があった。票取り合戦では、クジラ保護側の勝ちのようだ。

<妥協の精神による会議運営の促進>
ホガース議長は、コミッショナー会議による事前協議と歩み寄りで、対立を回避して決議を少なくし、議論をコンセンサスでできるだけ進めたいということ、また、政府代表の発言も原則1回とし、2回目は具体的な事項のみに限定し、会議の時間短縮の努力を訴えた。
それに対し、日本政府は、正常化の第一歩として、日本がこれまで会議の冒頭に行ってきた「通過儀礼」の保護関連の議題の削除提案、決議等の無記名(秘密)投票提案を出さないことに決めたと発言した。これで、かなりスムーズな議事が開始されることになった(図らずも‘正常化’の鍵は日本が握っていることを実証してくれた!)。ノルウエーは保護委員会とホエールウォッチングに関する議題の整理提案を効果的な運営のため取り下げた。
最初の議題、鯨資源に関する科学委員会の報告が始まった。

<クジラ資源の動向>
科学委員会議長はまず冒頭で、IWCクジラ目視調査(SOWER)に対する日本政府による船の貸与を例年にならって感謝。
最初はこれまで2000年から懸案となっていた南極海のミンククジラの資源量である。1993年に76万頭とされたが、その後の調査で、かなり数が少ないという結果が出ており、これが実際の減少なのか、調査方法による誤差か、あるいは群れの移動(氷淵の目視調査外)か、結論が出ないまま、今回も来年に持ち越された。日本は、調査の方法が原因で、減少してはいないという意見。JARPA I が役に立たなかったじゃないか、といわれると、そんなことはないと日本が言い返すが、実際に当初目的であった推定個体数については結論がでなかったことは確かである。
次に北太平洋のミンククジラ。日本の周辺海域の個体群はO-stock(オホーツク海個体群) J-stock(日本海個体群)がこれまでに明らかになっており、希少種で減少が懸念されるJ-stockの混獲が毎回問題となる。比較的沿岸近く(3海里)に生息すると思われ、沿岸調査捕鯨による捕獲及び日本と韓国での混獲が懸念されている。韓国がJ-stockに関連する目視調査を日本と協同で行い、またロシア政府が経済水域での調査を許可したことが評価される。今後、韓国と中国による共同調査も行われる予定。日本政府はDNAサンプルを収集し、モニタリングを行って対策を実施するというが、みんな信用していないような雰囲気。
昨年、調査捕鯨の結果ではJ とOの比率はどうなのですか?と水産庁に聞いてみた。「調査を実施している鯨研の知的財産ですから、お教えできませ~ん!」という答えだった。税金使ってやってるのに?

次に、今回のクジラ保護側の主な懸念材料である南半球のザトウクジラについての報告があった。 
南半球のザトウクジラは、戦前に鯨油目的で乱獲され、1938年に捕獲が禁止された種である。最近になって、ようやくそそのめざましい回復が複数国から報告されている。
ザトウクジラは、日本でもそうだがその派手な姿や歌声によって世界中で最も人気のあるクジラの筆頭に上げられる。南太平洋のいくつかの国々でウォッチングが開始され、集客はうなぎのぼりの活況、それらの国々にとって重要な収入源となっている。それと同時にこれまで生息状況がわかっていなかった海域での調査が実を結ぶようになった。トンガ、クック諸島、フレンチポリネシアなどの海域で調査が行われ、周辺で繁殖し、南極で索餌すると思われるザトウクジラの孤立した小さな群れがいくつか確認されている。そのザトウクジラが、この秋から日本が50頭捕獲する調査捕鯨のターゲットになる可能性があるのだ。
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