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2007年6月14日 (木)

アンカレッジ日記(3)

2007anchorage_seward_etc_049
その(3)1日目後半
<資源評価(続き)>
ザトウクジラの次は、南半球のシロナガスクジラについての報告が続いた。南極のシロナガスとピグミーシロナガスと異なる生活史の南西太平洋シロナガスに関して、チリが調査を開始しているが、まだその結果は十分ではなく、継続した調査が求められた。アルゼンチン、コスタリカなどラテン諸国はチリの努力に感謝し、継続的な調査を促した。
そして、ニシコククジラ。この群れは、世界でもっとも危機に瀕する大型ヒゲクジラのひとつである。近年、その主な索餌海域であるサハリン島でガス・石油開発が計画、実施され、会議では毎回のように保護を求める決議が採択されている。また、2004年のIUCNバンコク大会でも、この種の保護のための開発の影響緩和の提言とともに、周辺国が緊急国家行動計画を策定すべしという決議が通っている。国内でも私たちを始め、いくつかの団体がこの種の保護を求めて、関係省庁に対策を要望してきたが、それが実らないまま、2年間で4頭のメスを定置網によって死なせるという最悪の事態を招いてしまった。こんなことが続けば、2050年には絶滅するかもしれないそうだ。
しかし、水産庁は、この2年間、定置網業者への注意を促し、コククジラ肉が流通しないようにと指導して入るが、水産資源保護法にもリストできない状態が継続している。また、調査主体のアメリカとロシアへのデータの提出も行わないなど、後ろ向きの態度を取っている。
科学委員会の報告では、さらにこのクジラの2006年に写真識別された79頭のクジラの5.1%がいわゆる痩せクジラだったということも報告された。ロシアとアメリカの協同調査で個体識別がすんでいるコククジラにテレメをつけ、追跡調査をするという提案もでている。IUCNが石油開発会社に依頼されて組織した独立パネルとの協同で調査を進めるということだ。調査のかかる多大な資金が問題となっている。
いくつかの国々が、ニシコククジラの保護が現在最も優先されるべき事項だと意見を述べる。日本は、現状を危惧しているとし、地方自治体や漁業者に回遊の邪魔をしないよう指示を出し、また、水産資源保護法にリストし、保護策の改善を図ると答えた。

* これには驚いた。おととしからそればっかり言っているが、今度こそ3度目の正直と信じてもいいものだろうか?確か、この春の水産資源保護法改正はナマコとアワビの違法操業への罰則強化だけで、コククジラは?という質問に、「もう資源じゃないから」と答えていたと思うけど?

その後は、ホッキョククジラ(bowhead whale)。テレメ調査で西グリーンランドと東部カナダでのすみわけが進んだという仮設がでている。会議のあとの情報では、アラスカで先月捕獲されたホッキョククジラの首筋から130年前の矢じり様の破片が見つかったという。以前には200年前の武器が出てきたという話もあり、長生きに驚かされる。
* ちなみに、この記事の訳がヤフーにでたところ、ふだん数百人の訪問者しかいないうちのHPが突然6万7千人の訪問を受けたらしい!しかし、その人たちはほとんどがセミクジラ(right whale)のところに行き、そのままお帰りになったらしいというのは残念だった。

ホッキョククジラの次は北大西洋のセミクジラ(まだ、絶滅の危機を脱していない。船との衝突や混獲が憂慮されている)、南半球のセミクジラ(オーストラリアの調査では年7.5%の同化率)、北太平洋のイワシクジラなどの報告が科学委員会議長によって淡々とすすめられた。

<クジラの人道的捕殺方法>
次の話題はフィンランド代表によるクジラの人道的捕殺に関するワークショップの報告である。これは、捕鯨を行っている国々が自主的にクジラの捕殺方法や致死時間などの報告を行い、それについて検討をするもので、捕鯨国にとってはいやなものであるが、私自身は殺さないで!という人たちもいる以上は当然の義務ではないか、と思っている。
デンマークがまず、2006年のミンククジラとナガスクジラの捕鯨に関しての行動計画の概要を報告した。また、動物の福祉に関連したグリーンランドの大型クジラ猟に関する白書を紹介した。その後、ノルウェーがミンククジラの捕鯨に関しての報告をし、捕殺した546頭に損失クジラ(陸揚げできなかったもの)はないとした。彼らの開発したブルーボックスというレコードと陸からの監視の結果である。これに対してイギリスは1999年からのすべてのデータが出なかったことを遺憾だとし、ブルーボックスによる監視に懸念を表明した。
ノルウェーはこれに対し、自分たちは1981年から報告を継続してきたと反論。また、致死時間に関してはすでにデータが十分出たので、今後は必要ないとした。

アイスランドはこの組織が中立的でないので捕殺法などの報告はNAMMCOに行っているという。ちなみに、NAMMCO(Atlantic Marine Mammal Commission北大西洋海生哺乳類会議)は1992年にノルウエー、アイスランド、フェロー諸島、グリーンランドによって組織されたクジラを含む海生哺乳類の科学的管理機関であり、現段階での捕鯨を否定していない。日本がアイスランドとノルウェーの意見の同調。日本の捕殺方法や致死時間の報告もNAMMCOの作業部会で報告にしたので、IWCに出さなくても閲覧できるとした。
 これに対して、ドイツやオーストリアは捕鯨に関する会議はIWCが中心なので、それはおかしい、出すべきだという意見を表明。
アメリカがロシアとアメリカの先住民捕鯨の共同演習を報告。また39頭のホッキョククジラのうち、31頭が水揚げされ、S&L(ストラックアンドロスト=銛が当たったが、水揚げできなかった)は8頭で、昨年より悪く79.5%だったと報告。アメリカ先住民は銛による捕鯨を行っているが、二次的にはライフルを使用する。

イギリスは、もしこの委員会が捕鯨を奨励するつもりであれば、クジラの人道的捕殺については道徳的観点からも責任があるとし、対象となるクジラの苦しみを減らす努力は必要であり、そのためにもデータがなければ検討できないと意見を表明した。
日本は、合意できるポイントがあるとしながら、3つの点についての留意を促した。致死時間についてはデータを検討し、方法は改善する。その上で1.クジラの捕殺時間だけでなく、ハンターの安全性や効率も同じように重要である。2。日本は致死時間の改善に努めており、毎年短縮している。半数以上が即死している。これは陸上動物の捕殺よりはるかにいいものである。(えっ!半分は即死じゃないの?という驚きがNGOから)もうひとつはIWCが誠意を持って管理した捕鯨を認めれば協力をするが、誠意が感じられない場合は次善の策としてNAMMCOにデータを提出し、前向きな議論をして結果を報告する。
オランダは倫理的な観点から捕鯨国に改善を求めたいと意見をいい、また科学データは透明性を確保する必要があるとした。
ニュージーランドは、日本の前向きな発言に感謝を表明し、南大洋でのナガスクジラ捕殺に関するデータについて質問した。ミンククジラよりずっと大きいナガスの致死時間はミンクよりも長いのではないか?というのである。これに対して、日本は2年目のフィジビリティスタディの最中なので、NAMMCOにもデータは提出していないと答えた。
オランダから、太地におけるイルカの追い込み猟が人道的ではないという意見が出されたが、これに対して日本はイルカ類は国内管理の問題なので、2国間ルートで質問がほしいとした。
その後、混獲、ら網クジラの解放と人道的捕殺についての議論が行われた。

<その他の組織との関係>
2006年、ジャマイカで開催されたUNEP(United Nations Environment Programme)第12回の海洋環境を守るカリブ環境プログラムの行動計画の報告が行われ、科学委員会の委員がUNEPにオブザーバーとして参加してほしいという要望が出された。
また、クジラと船との衝突や油流出などの問題からIMO(International Maritime Organization=国際海事機関)において、適切な検討がなされるためにIMOと事務局の意見交換を求める意見があり、アドバイザリー委員会との協議で次回総会にIMO事務局長宛に手紙を送ることになった。また、漁業関連と混獲問題からFAOとの関係が、手続き上の議論からCITESとの関係について、また鯨肉の汚染問題からWHOとのかかわりも検討された。

会議後、7時からのアメリカ主催のレセプションのため最後は駆け足の議論となった。議長が1日目の議題がすべて終了したことに関して、参加国の協力に感謝した。確かに協調と妥協の精神とやらで表面は無事に終わったものの、鋭い刃を真綿でくるんだような会議の進行は不気味でさえあった。

レセプションは、ダウンタウンから車で15分ほど離れたアラスカ先住民遺産センターで行われた。いくつかのテントにはサーモンステーキをはじめ、トナカイやムースのソーセージ(食べなかったので味は分かりません)を含む山盛りの食べ物が用意され、横には紙皿、紙コップとプラスティックの使い捨てスプーンやフォークが。会議場のコーヒーブレークでも同じような使い捨てのコップや皿が置かれていたが、これはこの会議としては大変珍しいものである。今回はマイカップを持ってきてあたりだったと思いつつ、やはり紙皿に抵抗感が残った。

遺産センターの周囲は木立に囲まれ、中心に池があり、そのまわりに先住民の居住してきた家や使っている道具が展示されている静かなところだ。展示されている家の鴨居に毛皮がいちいち貼り付けてあるのは、頭をぶつけたときの緩衝用なのだろうか?ツリーハウスのような食料貯蔵庫(たぶん)もなんだか懐かしいような感じがしたし、人々の生活のあとというのは古今を通じてやわらかく、馴染み深く感じられる。

いつも、反捕鯨側のレセプションには日本政府代表団のほとんどが出てこないのだが、今回は驚くことに、ほとんど全員が参加しているかのように見えた。『だって、アメリカ主催ですもん』というGPのS君の答えに妙に納得。

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