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2007年6月20日 (水)

アンカレッジ日記(5)

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アンカレッジ日記(5)
 
 IWC珍道中の相棒から、森本稔氏が鯨研の理事長になったよ、という知らせがあった。なるほど、6月15日付で役員の入れ替えがあり、畑中寛氏の代わりに森本氏の名前が。
森本稔氏は、水産庁資源管理部次長を2000年4月に退職、公益法人を3つほど歴任して、今回の人事になった。1999年からIWC日本代表を務めている。前任者の島一雄氏は、水産庁次長から海洋水産資源開発センターに天下っている。畑中氏ももとは水産庁だし、世の中で問われている『天下り』の構図そのものかなあ、と思ったりもするが、70年代のころは、最初は水産庁に所属し、大日本水産会とかニッスイとかに移った人が代表を務めたらしい。水産業界の人が日本を代表しているかたちだ。
アメリカのホガース代表は、アメリカ海洋漁業庁の長官だし、今回のオーストラリア、ニュージーランド、イギリスなどは大臣が代表代理となって参加している。それに比べ、日本は、大騒ぎしている割には国として重要視していないのではないか、という疑問がわいてくる。

<最初の投票>
3日目の最初は南大西洋サンクチュアリ。これまでの会議でのやり取りとほとんど変わらない双方の意見が出て、ころあいを見計らった議長がブラジルにどうするかと聞く。
「はい、強い反対があることは認識しておりますし、また同時に強い支持があることに感謝もしています。いずれにしても私はこの結果を国に持ち帰って、国民に説明しなければならない責任があります。投票をお願いします。」とブラジルのマリア・テレサ氏がいう。今年最初の投票の結果は39対29、棄権3でまたしてもラテン諸国の祈りは届かなかった。

<日本の社会ー経済的価値に基づく小型沿岸捕鯨>
いよいよ、日本の小型捕鯨の提案である。森下丈二交渉官が、なかなか感情のこもったプレゼンテーションを行った。いわく、「沿岸小型捕鯨の歴史は、破られた約束の歴史なのです」。
どのように破られたかというと、まず科学委員会も同意しなかったモラトリアムの受け入れで、アメリカからアメリカの排他水域での漁業と捕鯨とどちらを取るかと迫られ、日本政府としては、漁業を選択する以外になかった。
ところが2年後にアメリカは自国200海里での漁業を禁止したので、結局日本は漁業も捕鯨も失うことになった。(確か、このとき、アメリカは沿岸捕鯨だけは残すという選択肢はどうか、と打診したと関係者から聞いたけど???)
これが最初の裏切りである。次に、モラトリアムの見直しを1990年にし、捕獲枠を設定するとした、しかし、枠の設定はされなかった。科学委員会は懸命に働き、1992年にRMPが出来上がった。しかし、本会議ではこれを否定し、科学委員会の議長が辞任するということになった。RMSに関しては、昨年作業が停止されてしまった(調査捕鯨がIWCの管理外で行われているのがネック)。
毎年のように沿岸地域社会に同情する決議が採択され、モラトリアムが沿岸地域社会に影響を与えていることを認識しながら本会議は迅速な対応をとらない。人類学者は、これらの地域社会が慣習として、また家族関係もクジラを中心に発達し、料理法や祭事、芸術なども古くから記述されている。生存捕鯨との区別はないと考えている、ひとつの反対される理由として「商業性」があるが、すべての活動は、商業にかかわっている。事実、アラスカでも、クジラヒゲで数千ドルもするバスケットを作って販売している。販売することがいけないのでなく、どんどん商売をするのは結構。日本の沿岸捕鯨も同等の権利がある。今回はこれまでで一番いい提案を持ってきた。今回は、

1.クジラ利用は沿岸地域社会に限る。モラトリアムの解除は求めない。
2.捕獲頭数を示していない、頭数の交渉は委員会の受け入れやすい数で設定する。その分をJARPN IIから差し引き、トータルな数は変わらない。
3.管理面を強化し、国際管理官を受け入れ、空中モニタリングも行う。DNA登録を実施し、100%違法なものがでないようにする。
4.2007年から5年間の実施でその間科学委員会からの助言があれば修正を受け入れる。

これが受け入れられないということは悪いメッセージとなり、結果が不毛であれば「ほかの方法」を選択する」というもの。

 次に発言した石巻市長は、一生懸命、英語でメッセージを読み上げた。その内容を聞き、彼が正直な人であることに驚いてしまった。あるいはこれは政府の隠されたメッセージだったのか・・・

 彼はまず、牡鹿の捕鯨が20世紀に始まった近代捕鯨であることを紹介した。また、石巻市というのは、町村合併の動きで、26の町村が合併し、現在は17万人を擁する町だといった。かつて、牡鹿町には入り江単位に15くらいの集落があり、その先端部に1906年に山口の東洋捕鯨が基地を作った。それまでは50数軒の寒村であったが、捕鯨産業が開始されるや、西日本から産業従事者が移動し、町の規模が拡大し、西の文化の交じり合った独自の町の様相が展開されるようになった。また、1960年が絶頂期で、国内でもトップの捕鯨基地になった、と。
つまり、少なくとも鮎川は近代捕鯨産業によって作られた町であり、文化そのものも、1900年以降に培われたものだと明言したのである。この点に関しては、何回か、NGOなどが調査しているので海外の代表は知っているにしても、日本の側からかくもはっきりと説明されることはなかった。この発言、日本政府が事前に確認していなかったということがあるだろうか?もし確認してこのような発言をさせたのなら、日本政府の真意はどこに?

それに対して「それ見たことか」という人はいなかった(いても不思議はなかったが)。
「すでに17年前に沿岸捕鯨は商業的な側面があるから認められないという議論があり、先住民捕鯨と同じというが、それとは別物である。モラトリアムの元ではできない。新しいカテゴリーの要求となっている(ニュージーランド)」
「石巻市長の話はよくわかった。しかし、60年前と今では事情が異なり、科学的な進歩を活用してRMPが作られ、また、国際的な協力を含め、RMSが実施する手段として求められている。この効果的な実施を目指すのがいいのではないか(スェーデン)」
「新たな提案に感謝するが、マグナソン法はアメリカの漁業者の発展のためにつくられた法律で、すべての外国船を対象とした。その代わりに、加工業者などの支援を行ってきたので、裏切りという言葉は当たらないと考える(アメリカ)」
「日本の提案は第3のカテゴリーに属するものと考えられ、支持できない。1国が出すのではなく、科学委員会が枠を提示すべき。特に希少で沿岸での混獲による減少が懸念されているJ-stock のアセスが終わってから出すべき(オランダ)」
「石巻市長のプレゼンテーションに感謝する。窮状は理解できるが、混獲や調査捕鯨によって鯨肉の供給はできているのではないか?(メキシコ)」
「日本は被害者といっているが実際は加害者ではないか(これに対しては暴言はやめるべき、というノルウェーの動議が出た)。調査捕鯨枠から減らすというのは結局のところ調査ではないのではないか?現在のサイエンスでは余分に殺さないのが原則だと思う。(イギリス)」など手厳しい意見がでた。

一方で支持する意見は、
「伝統的な食料の確保がIWCによって禁止され、被害を受けているのはわれわれも同じ。沿岸捕鯨が先住民捕鯨に通じているのは疑う余地がない。4つの社会で何千年(!?)も続いた伝統を支えたい。ただし、日本提案の監視制度は厳しすぎるので、(今後そのあおりは食らいたくない)(ロシア)。」
「持続可能な生活を求めるANCLOSにも適合し、また調査捕鯨の枠から捕ってくるので影響がない。アメリカは工芸品の販売が商業流通ではないというがそれには反対。地域住民にとって役立つことが重要(セントキッツ)」
「持続的な海洋資源利用を支持する。正常化、近代化の前向きな努力が重ねられている中で、差別的な扱いはやめるべき(ギニア)」
「豊かな文化、伝統を否定する権利はない。分配には一貫性が求められ、偽善は許されない(セント・ビンセント)」
「生活がかかっている。IWCのダブルスタンダードはやりすぎである。先住民と4つ地域ではニーズが同じだし、また先住民という呼び方はやめるべき(ドミニカ))
等々、双方がえんえんとそれぞれの立場での意見を表明した。
日本政府は、「モラトリアムには説得力がない。なぜほかの活動と比べてはいけないのか。木材も商業流通しているし、自動車だって商業流通しているのになぜクジラだけ全面的に禁止するのか?」と訴え、J-stock に関しては沿岸10海里以上離れることで混獲を防ぎたい。また非致死的利用も否定していない。沿岸地域でホエールウォッチングも盛んだ、と付け加えた。議論はまだ継続することになった。

最後に、私が知り合いに教えてもらった太地の市民によるブログの中に書き込まれたIWCについての意見を付け加えておきたい。ご存知のように、もし日本で伝統捕鯨の地があるとしたら、太地がそれに当たるわけだから。

ここから__________________

「続IWC会議」2007年5月24日(木)
日本の官僚がIWC会議において日本の捕鯨基地である太地町などの住民が鯨が獲れなく非常に困っているから先住民捕鯨のようなものを認めろというような発言をしていると何かの本かネットで読んだことがあります。こんな嘘を本当にIWC会議で発言しているとしたら太地町民として怒りを感じます。私たちは鯨がなくても十分生活していけます。そんなことより調査捕鯨枠の拡大で鯨の肉が増え太地で獲れるゴンドウ鯨やイルカの肉の値段が下落して困っているということを聞きます。太地町の鯨関係者は調査捕鯨はやめてほしいというのが本音ではないでしょうか。大方の太地町民は別に鯨が獲れなくても困らないと思います。その発言が本当なら先住民捕鯨などという嘘で世界をだまさないでください。そしてそのような詭弁で太地町のような小さな町を利用しないでもらいたいと思います。ここで私の素朴な疑問を書かせてもらいます。水産庁は捕鯨が再開されれば南氷洋に鯨を獲りにいきたいという会社があると本当に思っているのでしょうか。というのは私は捕鯨が再開されても船団を組み南氷洋に鯨を獲りに行きたいという会社は今の日本にないと思うからです。なぜなら大手の会社は商売をグローバルに展開しています。外国で鯨に関係しているとわかるとその会社の商品は不買運動の対象となり会社のイメージダウンは目に見えています。自分たちの会社の利益を守るため危険を冒してまで鯨の捕獲や販売には手を出さないでしょう。鯨を獲りにいく会社がなければ今国がIWC会議でやっていることは絵に描いた餅だと思います。そんなにしてまで捕鯨再開を訴える続けるのは自分たちの既得権益を守るためだとしかどうしても思えないのです。調査捕鯨をしている国営船団が商業捕鯨に名前を変えて捕鯨を続けるだけではないのでしょうか。私は国が鯨に多額の税金を使っていることに非常に不満を持っています。大方の日本人は鯨に税金が使われていることを知らないのではないでしょうか。IWCでの票買いだといわれるODAを含め一度公表してもらいたいものです。

今回の28日から始まるIWC会議を見物に行く三軒町長ご一行様の旅行費は一体いくらぐらいなのでしょうか。この前の中国旅行といい本当にいいかげんにしてもらいたいものです。
                                                  たいじちょうみん

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