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2007年4月 2日 (月)

生物多様性国家戦略見直しにかかる論点整理への意見

環境省への私たちからの意見です:

生物多様性国家戦略の見直しに向けた「論点に対する意見」

氏名:イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク 

意見該当箇所

1.(2)

2.(3)

3.(7)

いずれにも共通しますが、具体的な方針が見えないことが残念です。このままではお飾終わるのではないか、という懸念がなくなりません。

たとえば、1.(2)について言えば、長期的な視点に立ったとき、日本の漁業はどのような方向に向かうのか、という予想が重要な要素となりますが、この部分は水産庁丸投げになってしまうのではないかと懸念しています。

沿岸の再生なしには漁業の持続性も多様性保全もありえないということは常識ですが、水産庁はいまだに遠洋頼みで、沿岸生態系の回復への意欲はありません。「つくり育てる漁業」では「栽培漁業の推進」が最初にあげられ、「環境・生態系に配慮した内水面漁業・養殖業の推進」は最後です(3月29日の農水生物多様性国家戦略検討会の資料)養殖場による環境汚染、魚卵の多量な輸入などを考えると、長期的な視点に欠けているし、新たに作るが回復計画は見えないというものです。これまでの水産庁は、産業の推進・擁護の立場を堅持してきましたが、これでは沿岸漁業の再生もむずかしいのではないでしょうか。

一方で、現在立法化が進む「海洋基本法」では、国連海洋法条約への言及があるものの、内容への言及はなく、主眼は開発と国土としての海洋利用です。生物多様性国家戦略における海洋の保全との確たるリンクが必要と思われます。

以上について、環境省が主導し、長期的な視野に立った生物多様性の保全という命題にのっとって、どのように連携し、グランドデザインをイメージできるか、多少抽象的でもかまわないので、方向を提示してほしいと強く願っています。

2.その他全般的なこと

【意見】 今回、海洋における生物多様性保全が掲げられたことの意義は大変に大きいと感謝しております。

しかし、現実には、言葉の定義そのものもあやふやで、産業への配慮が優先されていると感じています。というのも、水産庁の漁業に関連する方針は変わらず、「漁業そのものが持続的な産業である」というひとことで、検証も方向も明らかではない後ろ向きの対応になったままだからです。
実際に、資源として利用できないニシコククジラについて、水産庁の水産資源保護法改正に関する担当者は「資源にならない」ために水産資源保護法対象として検討はしないと答えています。

まずこうした考え違いを何とかしない限り、海洋の生物多様性保全はたんなる言葉遊びになると懸念します。

また、懇談会の委員の中に、海洋生態系(あるいは海洋生物)の専門家が存在しなかったことも、議論を深めることのできなかった一因と思われます。

以上を踏まえ、今回課題として以下の3つについて、今後の検討会等の設置を要望します。

1.   海洋保護区の設置

今回の懇談会で唯一、ゲストスピーカーによるプレゼンテーションがあったものですが、概論は別として、具体的な方向に関する知床の実情について、現場(たぶんに漁業者の意見の代弁)の意見が前面に出ていて、日本沿岸全体に関しての青図がそこからはイメージできませんでした。南北に長く、黒潮、親潮の流れにはぐくまれた多様な海洋生態系を持つ日本の沿岸をどのように捉え(たとえばブロックごとの検討など)、どのような海洋保護区を設定していけば生物多様性の保全が可能であるのか、早急な具体的検討が必要だと思います。

2.   種の保存

ゲストとしてWWFJがニシコククジラについて触れましたが、まず最初に、沿岸の種の
保存に関して、水産庁が種としての保護ツールを持たないことが問題です。

現在100頭前後しか生息していないニシコククジラについての対応に顕著なように、水産庁のできることは漁業法で捕獲・所持・販売を規制することです。実際に「毎年メスが死に続ければ、早晩絶滅の可能性がある」といわれるメスをこの2年間で4頭も日本沿岸で死なせています。
にもかかわらず、水産庁は海外調査とのデータの突合せそのものも拒否しているような子どもじみた対応を取り続けています。

私どもがかかわるクジラ類の多くは情報不足も含め、レッドリストに掲げられています。しかし、たとえば推定個体数が日本海149~2371頭(1991年IWCーなぜか、水産庁の資源評価では古い情報が掲載されている)太平洋2500~10000(1991~92)、
オホーツク海310~1000頭(1983~89)とされ、希少種にリストされるツチクジラについて、年間66頭捕獲が許可されています。ツチクジラの社会行動については、父系社会の可能性もあるという意見もありますが、まだ解明されていません。

高度の社会性を持ちながら、個体群の動向がまったく把握されていないだけでなく、推定
個体数が他の種からの推定でしかないシャチに関しても、学術目的と称した捕獲計画が
進行中です。

残念ながら、これはほんの一例なのです。種の減少を減速する目的で行われる2010会議を日本で開催する意気込みであるというのに、足元の種の保存への対応がとられていないのが現状です。

3.   国際条約の批准

もうひとつ、異常なことは、日本のように周囲を海で囲まれ、海洋生物種に恵まれている国が、移動性の種に関する国際条約の批准を長年拒否していることです。「ボン条約にはクジラが含まれている」というのが複数の行政担当者に聞いた言葉です。しかし、ボン条約は持続的な利用を否定してはいません。留保を含め非常に緩やかな条約と聞いています。日本が科学的な保護・管理をもし本当に推進しているというのであれば、ボン条約を早急に批准し、その誇るところの「科学調査」を生かせばいいと思いませんか?

この3つに関しては、専門家やNGO等関係者による生物多様性保全を前提とした検討を
行うべきだと思います。具体的な戦略が作られなければ、海洋の生物多様性保全を掲
げた意味がありません。

もうひとつ、一般的な意見として、「持続的な利用」という言葉の共通認識が必要ではないかと思っています。
産業の側から言うと、「持続的な利用=利用できる」になりかねないからです。
生物多様性の保全が前提でなければ持続的に利用できないといいながら、
産業推進を第一義とする省庁がそのことを理解しているようには(少なくともこれまで
の経緯を見ると)見えません。

もちろん、環境省の担当官の方たちだけで解決できることでもなく、障壁があることは
分かります。しかし、いずれどこからか始めなければならないことだと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

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