生物多様性国家戦略地方説明会
生物多様性国家戦略の見直しについての意見を送ったので、先週末に環境省から埼玉で開催する地方説明会で意見を発表しませんか?という申し出を受けた。とてもいい機会なので、喜んでお受けし、意見(4月2日のブログ)を読み返してみると、大急ぎで作ったのがありありの言葉足らずのものであることを認識。早速パワーポイントを作成して、意見の補強を図ることにした。テーマを海洋の生物多様性保全をぜひ具体的に前進させてほしいというものとした。
日本はとても小さい国だというのが私たちに共通した認識である。日本の国土面積は世界の60番目に当たる。しかし、環境省の資料を改めてみると、排他的経済水域(EEZ)の面積は世界でも6番目なのだ。だからこそ、きちんとした戦略がすぐにも必要ではないか、ということでプレゼンテーションをつくった。埼玉は数少ない海無し県だけど、海の恩恵は有形無形で受けているのはみんな同じ。日本沿岸の生態系を健全に保つことは温暖化による海の環境の変化の進行している今、特に重要な課題となっている。
そして、これまでの国家戦略の中での海洋の扱いについて、各論は水産庁が作っているところの問題も指摘した。水産庁は、水産業が生物多様性保全に基づいた産業だといっているけど、現実はどうなのかという厳しい点検をしない。過去の乱獲や沿岸開発、干拓などでどれほどの沿岸の魚資源にダメージを与えてきたかというような総括もない。取れなければいったん禁止するとか、規制するとか、あまり根本的な解決となるような施策を作っていない。
それだけではない、毎年、せっせといわゆる種苗(つまり稚魚とか幼生)を放流していて、たとえばその数は魚で言うとヒラメの2400万匹、マダイの1800万匹にニシンやトラフグ、カレイがそれに続く。クルマエビは1億2千。一番多いのはアサリの18億。
一応は地域の系統群に配慮して放流しているというが、一時に、同じものを放流するわけだから、何らかの影響があるのでは?と思うのが普通でしょ?
養殖はまた別で、これには輸入物も当然入っている。逃げ出さないというけど、カナダのアトランティックサーモンのように、逃げ出したり、輸入サーモンについていたウオジラミが地域のサケの大きなダメージを与えてしまったという例がある。また、餌や糞などによる水の汚染も大きな問題となっている。
沖合いに張り巡らされた定置網に混獲されるクジラ類もあとをたたない。ニシコククジラがいい例であろう。
それにもちろん公海における漁業と日本人の責任。
それから、保護会域内での調査捕鯨についても問題として入れることにした。
というようなところから、こうした持続不可能なことをする省庁に下駄を預けて本当にいいの?ということ、でも環境省は弱い立場なのだから、それをクリアするにはどうすればいいのかというワークショップについての提案も出した。
当日の意見発表は5人。先ごろ、生物多様性国家戦略に対応した国内法が必要だという意見書を出した日弁連の弁護士さん、エゾシカの保護管理計画をいち早く作成し、実行した研究者、神奈川県秦野市の行政の人、企業の社会的責任(CSR)のコンサルタントをしている会社の人と、内容も、国内法の作成を、ということから、より良い野生動物の保護・管理施策の推進、生物多様性の地域計画への支援を、そして、国家戦略に企業が積極的に参加できるような仕組みを、という風に、内容は多岐にわたり興味深いものだった。
残念ながら、告知期間が短く、よく知られているわけではなかったためか、そもそも話題そのものが興味を引かないからか(両方ともかもしれないが)参加者が少ないのは残念だった。でも内情をいくらか知っていると、環境省が大変な思いをしながらも、ちゃんと地方説明会を果たそうとした努力の結果が昨日から始まった地方説明会なのだ。もし、これを見て、参加しようという方は環境省のHPで確かめて、今日は北海道だけど、仙台、名古屋から沖縄まで、全部で8箇所の開催が予定されているから。
意見をどしどしいって、より良い戦略ができるように協力しましょう。
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