« 2007年2月 | トップページ | 2007年4月 »

2007年3月20日 (火)

自然・不自然

「人間」を人間をまったく知らない外部のものに説明するとしたら、一人の人間の身体能力を示せば事足りると考える人はいないだろう。人間というとき、人が人と生きる姿、培ってきた文化なども同時に表現しなければ人間を説明することにはならない。

では、人間以外の生き物ではどうだろうか。単独で増殖するあまり変化のない生物は別として、ある程度進化し、社会性を獲得した動物についてはどうだろうか?

デカルトの時代はいざ知らず、自然に関する調査・研究が進み、それぞれに個性があり、また、ある社会のなかでそれぞれの役割を担っている事が理解されている現在、その1個体を取り出し解剖したところで、その種の説明になると考える人はあまりにもうぶで、無知な人といえないだろうか?

それが無自覚的に受け入れられているところがある。日本の大多数の動物園・水族館とそれを支持する人たちである。

昨年の夏、毎日新聞のお子様迎合夏休み企画と思われる水族館よいしょ記事が、ある日本語もよく理解していないと思われる若い記者(少なくとも、もらった手紙の失礼さ加減や漢字の間違いからそう判断した)によって連載された。あまりのひどさに意見を出した結果かどうかはしらないが,同紙の日曜版で「いのちの王国」という連載ものがある作家によって開始された。

最初、まじめに動物園・水族館問題に取り組むのかと思いきや、どうも、作家自身が問題意識を持っていたり、あらたに動物たちに興味を持って調査した形跡はなく、たんに現実容認であるということが分かった時点で、真剣に読むのをやめた。しかし、今回は、鯨類飼育に関係していたため、義務的に読んで見て、ひどいという認識を新たにした。

そのまずはじめが冒頭に書いた種の理解についてである。作家は、もともと、その動物がどのようなところで、どのような暮らしをしてきたかに興味はほとんどないようだ。その代わりに、施設の紹介とそこでの飼育について、もっともらしい記述を行っているが、そんなものは訪問する施設に資料をもらえばまとめられるずぼらこの上もないものだ。

たとえば、今回のシロイルカ(ベルーガ)の紹介はこうだ。「『芸』というよりも、この真っ白いイルカの能力をわかりやすく知るための組み立てになっている」ベルーガの能力をどのような芸があらわしたか、どのように組み立ててあったかさえ記述を省いている。彼女の興味は「園内どこからでも明るく広々とした太平洋を臨むことができ」かつ、展示よりもパフォーマンスに重点を置いているから、「入園者が途中で昼食を挟んだり、’普通’の展示スペースをのぞいたりしながら順番に移動していくと、実にスムーズにすべてのパフォーマンスが堪能でき」というところにあるのである。これは水族館が出しているガイド以外の何者でもないのではないだろうか?しかも、飼育者が「動物たちが嫌だと思うことはしない」ということを例に、必ずしも営利目的ではないと断言までするのだ。少しインターネットででも検索すればベルーガがどのような環境でどのような生活をしていて、水族館でのパフォーマンスが自然なものかどうかが理解できるであろうに。また、シャチに関しても、人間が身体を触らせることが彼らの健康維持に大切だというが、無理をして捕獲してきたものだからこうした維持管理が必要になるというそもそもという視点がない。水族館にいて当たり前、見せれば教育的というあまりにも無神経な紹介に、腹が立つのを通り越して関心してしまうほどだ。

ちなみに、彼女が’普通’の展示と書いたところこそ、水族館の教育的な面が生かせるところで、施設としてきちんとした生態等の説明を掲示する義務が教育施設として必須のはずだ。パフォーマンスはどのような理屈をこねようと、サーカスの動物芸の仲間であり、子どもたちに対しては(時として大人にも)、野生動物とペットの混同を招く悪い見本にしかならない。

もうひとつおまけ。編集部がシャチの「ビンゴ」のことを紹介していた。アイスランドから連れてこられた個体であり、えさはホッケとあったが、ホッケはサハリンから北海道、相模湾から対馬海峡に分布し、アイスランドの魚ではなさそうだ。

ちなみに、アイスランドにおけるシャチは、ニシンやサケを食べるものとアザラシやトド、小型鯨類などを食べるタイプがいるとアイスランドの鯨類についての紹介にはあった。たくさん分布している場所は、ニシンの多い場所らしいが、ビンゴは果たしてどっちのタイプなのだろうか?そうした興味も抱かずに、一体どこをみているのだろう?こんなことでお金を稼いでいるの?恥を知りなさい。

2007年3月16日 (金)

生物多様性国家戦略の見直しについて

3月13日に、昨年8月から7回にわたって開催された環境省の生物多様性国家の見直しのための懇談会が終了し、15日には早速その結果を公表するとともに、一般からの意見受付が開始された。

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8155

日本が生物多様性条約を批准して1995年に作られた国家戦略は別名「ホッチキスどめ戦略」と呼ばれ、環境庁(当時)の主導性の発揮が薄く、各省庁間の縄張り意識ばかり強調された問題のあるものだった。2002年から作成を開始された新戦略においては、構成が生物多様性を脅かす「3つの危機=人間の生態系に与える危機、人間活動が減少して生態系に与える危機、移入種」という背景を見つめ、それに対しての「理念と目標」を設定し、「基本方針と主要テーマを」を立てて「具体的施策」を掲げるという構成で、枠組みはできたものの、省庁間の縄張り意識、生物多様性保全に関しての理解度などから、最後の具体的施策においては前回の後遺症が残り、特に水産関係は95年から前進していない愚作であったと思う。もうひとつの問題は、作られた戦略の点検が数値目標などもないためもあり、手前味噌のようなオッケイ、オッケイ評価であったことも惜しまれる。

今回、02年の構成を生かした上で、横断的、また超長期的な施策を模索しようという意気込みと、地域を越えて地球規模での保全への取組、気候変動と多様性についての深い認識、そしてなにより公開性が高まったことは大いに評価したいと思う。

それから、ここが私たちに関係するところだが、前回、私たちががんばった結果として海棲哺乳類の保護と管理が書きこまれたことを一歩進め、「沿岸・海洋域の保全」が個別項目として加えられたことは特筆すべきことだと思う。

ただし、具体的名内容については、知床を例にとって漁業との関係が多少語られただけで、それ以上話は進まなかった。この点については、またしてもホッチキスどめにならないように、意見を言っていく必要があるだろう。

生物多様性なんていうと、とても分かりにくいけど、私たちがこの地球上に生かされている土台を形作っている最も重要なもので、その保全に私たちの将来がかかっているということを忘れてはならない。私たちは、きれいな空気と水なしには生きられない。私たちが食べるものも、きれいな空気と水、光と土壌が必須であり、これらは逆立ちしても、ヒトが生産できない(するとすればそれ以上のエネルギーを無駄に使う)。人間のおごりがこの地球環境を危うくしている今、一人一人がその重要性を認識していかなければならない。

2007年3月10日 (土)

ウォッチング大成功!

たった今聞いたとてもうれしいニュース。静岡県の富戸でウォッチングを続けている石井船長から電話が入った。今、ある行政が募集したウォッチングのお客さんたちを港に連れて戻っているところだという。明日はしけだというので、1日早めた。

で、いつも船を出してくれる方が所要で駄目だったので、これまで、ウォッチングに対してもっとも否定的な意見を持っているうちの一人の方に船を出してくれとお願いし、それならば、と思いがけず、その方が快諾してくれた。ウォッチングは運の賜物だから、どう結果が出るか分からないが、とにかく、いい滑り出し。

それだけではなかった。まったく幸運なことに、3~400頭のカマイルカの群れに遭遇。3艘の船が知らず知らずのうちに、イルカの追い込みの体制になっているのに気づき、猟における体験がこのように生かされていることにも感動を覚えた、と。

カマイルカはそれまで猟の対象ではなかったから、それほど初参加の長老にしてもやきもきすることもない。そればかりか、こうした結果がでることでみんなに喜んでもらえて、みんながハッピー。

そして、帰りは猟の時のように急いで船を進ませるのではなく、のんびり、ゆっくりと潮風を楽しみ、エンジンをいたわってやれるし、燃料も節約できてエコロジカル。いうことなし、という弾んだ声の報告に、こちらもうきうきしてくる。

今日みたいに、春らしい日差しをいっぱい浴びて、船に揺られるのはさぞ極楽でありましょう、と想像するだにうれしくなるような報告なのだった。

石井船長はこうした体験を4月17日(土)に千葉県立博物館で行われるクジラとウォッチングに関しての集まりで話されるそうなので、皆さんも直接船長の話を聞きに行きませんか?

2007年3月 7日 (水)

水産庁のHP更新!

2月に開催された「正常化」会合直前までは、ウルサン会議応援ありがとう!で、その後英文での会議参加についてのお知らせで延々北水産庁捕鯨班のHPがやっと更新されたようだ。トップページの最後に捕鯨班からのメッセージがあって、以下のような文言がでてくる。

*******************************

私達は、この地球は人間を含む全ての生き物によって共有されなければならないと信じています。一握りに(ここは’の’ね!)国々や生物によって支配されてはいけないことを知っています。持続的な社会を実現するためには社会や文化の違いを超えて全ての人々同士がお互いを尊敬し配慮することが必要です。難しいことではありません。先ずはこの世界は一部の人間のためだけではないことを知ることから始めてみてください。私達の目標は一人の力では実現が難しいのです。しかし、みなさんと一緒にきっと達成できることだと信じています。

*******************************

ついでながら、ほんとにそのとおりですよ。ひとつだけ、生物が支配するというのはSFっぽくて妄想じみているけど、確かに一部の人の金儲けと食い意地だけが[日本文化]と尊重されてはなりませんね!

« 2007年2月 | トップページ | 2007年4月 »