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2007年1月23日 (火)

またコククジラが・・・

1昨年4月、東京湾を訪れたコククジラについて記憶されている方もあるだろう。数千人の人を呼び寄せた彼女(メスだった)は、残念ながら定置網にからまって溺れ死んでしまった。その3ヵ月後、今度は宮城県沖で、おやこのコククジラ(母と娘)がやはり定置網にかかって死んだ。そして今度はこの19日に岩手県釜石で・・・。詳細は発表されていないが、一部では、メスの子どもだったというように伝えられている。

コククジラは、ザトウクジラのように見栄えの良いクジラではない。英名のgrey whaleにあるように、全身ダークグレイで、そこら中にフジツボやらウオジラミやらがくっついている。お世辞にも愛らしい姿とはいえないと思うが、捕鯨時代に母クジラが子クジラを守って船に挑んだために付けられたという「デビルフィッシュ」という名前も不当であろう。

日本の業界筋は「クジラがわれわれの魚を食べてしまう」というようなことをしきりに言うが、このクジラが食べるのは浅瀬の砂の中にいるゴカイの仲間で、身体を倒すようにして海底の砂をさらい、中にいる底生生物をヒゲで漉しとって食べる。大体が右利きだが、中には左利きで左側を倒して砂をすくうやつのいるらしい。岸近くで生活するために、初期のころの捕鯨でかなり捕られ、大西洋の個体群は絶滅したといわれる。

アメリカ沿岸の個体群も乱獲のために絶滅に瀕したが、アメリカの手厚い保護で回復して、絶滅危惧種リストからめでたく脱却できた。

もうひとつの個体群は、サハリンから南中国を移動するニシコククジラと呼ばれる個体群で、1970年代初期には、日本、日本の占領下時代を含む韓国、ロシアなどが乱獲したために絶滅したと考えられていた。その後、小さな個体群が生き残っていることが分かり、旧ソ連の崩壊後に本格的な調査がロシアとアメリカの協力で始まって、今は個体識別がすんで個体数わずか100頭あまり、繁殖可能なメスは23頭と報告されている。

専門家は、毎年1頭ずつメスが死ねば、早晩この個体群は絶滅すると報告している。最近、この個体群の一番の脅威としてサハリンにおける石油・ガス開発があげられ、開発会社はクジラへの影響軽減を要求されていた。しかし、それより前に、日本沿岸で立て続けに不幸な事故が起きてしまったのだ。

現在、ニシコククジラは水産庁管轄で漁業法によって、捕獲を禁止されているだけである。水産庁は、いずれは水産資源保護法にリストする予定だそうだが、コククジラの保護には定置網をどのように効果的に規制できるかということが重要である。同法では漁法の制限ができることになっているが、定置網の規制まで行くかどうかが問われる。

水産庁は、資源的に有効な利用ができない種についてはとても冷たいので、IUCNが2年前に国家緊急行動計画を決議しても、IWCで毎年のように周辺国の保護への取組が勧告されても緊急の保護策をとりえなかった。また、環境省はこれまで海生動物には手をつけることができなかった経緯のために、データや専門家などがいないため、取組に及び腰である。

水産庁や環境省だけではない。日本沿岸で3年で4頭のメスをむざむざと殺した責任を私たちのすべてがいま問われているのだ。

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