カマイルカの枠の事もあるしl、イルカ飼育に関して、一こと言いたい。
【背景】
9月から、イルカの追込み猟が和歌山県の太地で行われている。もともとは、伊豆地方で江戸時代にイルカの群れを一気に捕獲する方法として開発されたものだが、繁殖力が低い海の哺乳類を一網打尽に捕獲する方法が持続的なわけはない。特に、戦後に捕獲数が増大して万のオーダーになると捕獲を続けてきたスジイルカが減少して取れなくなり、次にマダライルカを捕獲するようになった。やがてマダライルカもいなくなり、捕獲対象はバンドウイルカにとってかわられた。伊豆地方での捕獲地は4箇所から1箇所残すのみとなり、その捕獲地の富戸では産業ダイビングやウォッチングに変わりつつある。
追込み漁業としては後発の和歌山県の太地は、かつての捕鯨の基地として、鯨類の肉の販売体制が整っているため、今でも産業として盛んであるが、最近のクジラ肉あまりなどもあって、イルカを肉として販売するより、生きたまま捕獲して飼育施設に売るほうが値段も高く、商売としてのうまみがあるようになった。
【海外との意識の違い】
一方で、欧米を中心に(いまや欧米だけではない)、野生動物としてのイルカに親しみを覚える層が増え、イルカを捕獲し、肉にするのはもちろんのこと、飼育することに対しての強い反対が生まれて来ている。こうした状況は、日本国内でも若い人たちを中心に広がりつつある。海外では、イルカ研究者や生態学者がイルカ追込み猟に強く反対し、世界動物園水族館協会では2004年に追込み猟によるイルカの導入を行わないよう勧告が出されていると聞く。
海外研究者の指摘を待つまでもなく、追込み猟が少なくともこれまでは持続的でなかったということはすでに実証済みのことだ。日本が1992年に生物多様性条約の批准を行い、水産庁としてもイルカ漁業に関しての改善を試みたが、結果として出てきたのはこれまでの実績を重視した捕獲枠であった。来年、今度こそ14年ぶりの見直しが行われる予定だが、ここでもやはり産業優先の姿勢が強いだろうことは予想できる。さらに、少し減らした分は新しい枠(カマイルカ)で補うという前時代ぶり。このことに関して海外からの指摘は正しい。ただし、海外のやり方すべてに賛同するわけではない。
【イルカの知能と科学性】
国内でイルカ猟や捕鯨を擁護する人たちは、反対する人たちがイルカやクジラの知能が高いというのを非難(あるいはばかに)する。種差別だという人もいる。私たちは知能を根拠に反対はしていない。
しかし、イルカを飼育する人たちやイルカに癒してもらいたい人たちは、少なくともイルカが知能の高い生き物だと思っているようだ。イルカは社会性を持つ大型動物だ。しかし、同じ社会性を持つ大型動物でも、ジャッカルとかオオカミに癒してもらおうと群れに中に子どもを放り出したり、一緒に走るようなプログラムは今のところまだない。あまり流行りそうにもないが、それよりも陸上の大型の野生動物に関しては「危険だ」という認識が強い。そうした危機意識がイルカに関してなぜかほとんどなく、触ったり、一緒に泳いだり、上に乗ったりということを大きな施設ではなくでも結構平気でしてしまう。イルカを飼育する人たちはきっとイルカの知能がほかの動物とは違うという信頼感があるから、大切な金づるを傷つけるなどと余計な心配をしないで、観客を水槽に放り込んでいるに違いない。
最近、イルカが大型類人猿と同じように、鏡に写っている自己を認識できるという研究報告があった。大型類人猿に関しては、京大の研究者を中心に、大型類人猿の権利宣言があらわされ、種の保護とともに飼育に際しても慎重にすべきとしている。海外の研究者の中には、なぜ、大型類人猿に関しては前衛的な日本がイルカについてはまったく考慮しないのかといぶかるものもいる。
日本では、イルカが家畜並みに危険でない(まったくということではない。事故の報告も実際はある)し、また穏やかでやさしいところに付け込み、また比較的廉価で入手できることから、水族館のみならず、ダイビングショップとか、お手軽な施設でふれあいプログラムなどで客寄せをしている。監督官庁である環境省も、都道府県の生活環境課もしくは衛生課などなどもぜんぜん危険だと心配などしていないようだ。中にはいい加減な施設で飼育するものだから、1年もたたずに死亡した(この場合はイルカ)という報告も少なくないが、取替え可能な商品である現状を変えない限りはこうした悲惨な現実(イルカはもちろん人間の教育としての)はなくならないと思われる。今年、環境省の管轄の動物の愛護
と管理に関する法律の改正があり、すべての動物取り扱い業者の登録の義務ができた。そして、飼育の規準に従って飼育しない場合は登録取り消しと罰金も課せられることになった。しかしこうした改正も何の役にも立っていない。登録するための立ち入り調査をするのは市町村の保健所の役目で、せいぜい獣医の資格を持つものが行うことになる。イルカの生態など何のその、ペット感覚で飼育環境を見るのだから規準などあってもなくても同じようなもの。先ごろも南伊豆のあるダイビングショップに保健所の獣医が立ち入り調査を行ったが、異常行動に関しても目をつむったまま、こちらの送った海外の規準比較表も関係なく生簀の大きさと飼育しているのが元水族館の飼育係のベテランであったということで、導入時に1頭がすぐに死んでしまったことなどなんら考慮されない。こうした現状を変えるのは、まずそうした施設には行かない、施設に反対する、行政に対してちゃんと法律を守るようにいちゃもんをつけるなど、一人ひとりが面倒でもやっていくしかないようだ。
「ウツクシイにほんのウツクシイわたしたち」であるためにもね!
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