アイスランド、ナガスクジラ猟再開か

環境保護団体、EIAの声明によると、動物福祉の観点から6月から8月末まで中止されていたアイスランドのナガスクジラ猟が再開される可能性が出てきた。6月の勧告で、アイスランドの捕鯨は今後中止されるという観測が広まっていた。しかし、アイスランドのスヴァヴァードッティル食料・農業・漁業相は、「漁具、漁法、監視の強化に関連する厳格な規制のもと」での捕鯨の継続を認めた様子だ。

アイスランドの捕鯨に関しては、レオナルド・ディカプリオ、ジェイソン・モモア、ヒラリー・スワンクら俳優や、ジェイムス・キャメロン、ジェイン・カンピオン、ピータージャクソンなど、著名なディレクターが猟の再開に反対する書簡を食料・農業・漁業相に送付したそうだ。その中では、アイスランドで今後展開される予定だった総額で1.5億ドルの複数の関係者によるフィルムプロジェクトへの投資が中止される可能性が示唆されている。

https://www.icelandreview.com/news/true-north-demands-injunction-against-whaling-company/

True Northというアイスランドのフィルム会社が、捕鯨の再開に対して停止の訴訟を起こしたという情報も入ってきている。

2023年9月15日 (金)

アイスランド捕鯨一時停止

アイスランド食品獣医局(MAST)は、9月7日に行われたクバルル社による捕鯨が、新たな動物福祉の手順に違反したとして、捕鯨船クバルル 8の操業を一時停止する決定をした。

MASTのウェブサイトに掲載されたプレスリリースによると、9月7日にクバルル8号から発射された最初の銃弾が「指定されたターゲット・エリア外」でナガスクジラに命中し、その結果、ナガスクジラが直ちに死亡しなかったことが監視作業によって明らかになったという。新たな手順では

このクジラは直ちに後続の射撃で死に至らなければならなかった。しかし、追撃は約30分後まで行われず、ナガスクジラはその射撃の数分後に死亡した。この遅延は動物愛護法と延縄漁業規制の両方に対する違反であると食品獣医局は判断した。この操業停止処分は、是正措置が実施され、食品獣医局と漁業局が確認するまで続く。

 

https://www.icelandreview.com/news/whaling-vessel-suspended-for-violating-welfare-protocols/

2023年9月 2日 (土)

フランスの水族館で生まれたシャチの家族が日本に?

須磨海浜公園内に水族館(神戸須磨シーワールドhttps://kobesuma-seaside-park.jp/pdf/230516_suma-naming-hp.pdf)

が新たに建設されることを懸念してきたが、最新の情報が入ってきた。それによると、フランスのマリンランド・アンディーブから4頭のシャチが日本に移送され、そのうちの何頭かは須磨シーワールドで飼育される可能性がある。

(情報簡単翻訳 ー情報もとはhttps://www.facebook.com/oceans.orcas

関係筋によると、マリンランド・アンティーブのシャチの移送は、2024年1月から2月の冬季閉鎖期間中に行われる予定だという。このことは、輸送を証明する航空会社からも確認されている。4頭のオルカ、ウィキー、イヌーク、モアナ、ケイジョ(いずれも血縁関係にある)は日本に輸出され、3つのパークに分散されるようだ:


- 鴨川シーワールド:4頭のメスのオルカがいる: ラン、ラビー、ララ、ルナ
- 名古屋港水族館: メス2頭、オス1頭:ステラ、リン、アース
- 神戸須磨シーワールド  


神戸須磨シーワールドはまだオープンしていないが、鴨川シーワールドを所有するグランビスタグループが開発中である。
2023年9月以降、オルカスタジアムへの一般入場は週末のみに制限される。MLAのオルカはすべて同園で生まれ、これまで一度も移送を受けたことがない。
フランス国内の活動家グループ(@cest.assez.associationなど)は、移送を阻止するための法的手段を模索するとともに、政府に支援を求めている。MLAはまだ許可を得ていないため、十分な世論の圧力があれば、MLAの決定を覆すか、許可を拒否することができると期待されている。
彼らの努力を支援するために、@cest.assez.associationのバイオグラフィーとストーリーにリンクされている嘆願書に署名してください。

(ここまで)

フランスでは近年、鯨類の水族館飼育が動物福祉の観点から問題視され、新たな飼育はできないことになった。また、現在飼育中の鯨類についても、飼育継続を望まない方向になっている。そのこと自体は喜ばしいことだが、飼育されてきた鯨類が今度は異なる飼育施設にうつされる懸念も大きい。

2023年8月19日 (土)

ロリータ=トキタエ、解放目前に逝去

マイアミ・ヘラルド紙が19日、前日18日の午後にロリータの愛称で呼ばれるシャチが死亡したと伝えた。

https://www.miamiherald.com/news/local/community/miami-dade/article278388494.html

捕獲されたのは推定4歳で、死亡した時の年齢は57歳とされる。アメリカの絶滅危惧種法にリストされ、長年飼育されてきたマイアミ水族館の環境に問題があると2022年に動物福祉法違反を指摘され、北西太平洋のもっと冷たい海のサンクチュアリに解放される目前の死だった。昨年秋から体調を崩し、回復途上にあると言われていたが、この2日間、容体が悪化、必死の手当も実らなかった。

同じく48年前に群れから引き離されていくつかの水族館を転々として87年からサンディエゴのシーワールドに閉じ込められ、解放の目処のなっていないノーザンレジデントに所属するコーキーの一刻も早い解放が望まれる。まだ間に合ううちに。

https://www.thesun.co.uk/news/18883667/seaworld-saddest-orca-corky-inbreeding/

2023年8月 9日 (水)

ロリータ(トキタエ)と呼ばれたシャチ

「人間が動物の生命を真に尊重するためには、どれほどの道のりが必要なのか」、8月5日付のロスアンジェルスタイムズの意見欄で、非営利団体「オーシャン・コンサーベーション・ソサエティ」の会長で、鯨類行動学の専門家、マッデレーナ・べアッツイはこう嘆いている。

 昨年、ロリータ(彼女の出身海域の先住民ルミ族の言葉ではトキタエ)と呼ばれてきたマイアミ・シーアクアリアムのシャチの所有権を、新たな持ち主が手放すことを決意し、マイアミ・デイド郡とロリータを支援する組織と共同でサンクチュアリに移送する法的拘束力のある共同署名を調印したので、連邦政府の許可が降り次第、ロリータは元々の住処であった北西太平洋の海域に設置されるサンクチュアリに移される運びとなった。

ロリータ=トキタエは、1970年、いまから半世紀前にワシントン州にあるペンコーブで捕獲された、1966年生まれと推測され現在飼育下で生存する唯一のサザンレジデントシャチだ。サザンレジデントのシャチは、2005年に連邦の絶滅危惧種法で絶滅危惧とされ、現在は73頭しか生存していない。

しかし、飼育下にある彼女は、当時同法の適用外で、生まれ故郷とは異なる暖かすぎる気候のマイアミの、日差しを遮る屋根もない狭い水槽で、1日3度のショーを強いられてきた。また、1980年にはパートナーとして導入されたオスのシャチのヒューゴを失いその後はたった一人で生きてきたのだ。群れで暮らすシャチにとって、この状況は望ましいものではなく、背ビレは折れ曲がり、同じところをぐるぐると回る、或いは壁に向かってじっと動かない様子を鯨類の行動ををよく知るベアッツイは「(その)絶望感に圧倒された」と記述している。

彼女の運命が変わる兆しを見せたのは、2015年、非営利団体の粘り強い抗議や訴訟の結果として、NOAAが飼育下にあるロリータ(トキタエ)を彼女が所属するサザンレジデント同様に絶滅危惧種法にリストすることになったからだ。即時解放は、50年間もの長期的な飼育下にあるシャチにとってリスクが大きいとNOAAは判断した。しかし、2022年になって、ロリータ=トキタエは改正した動物福祉法の対象となり、一般への展示も禁止されたことやその飼育状況の改善も求められていることから、新たな持ち主にとってもメリットは無くなったのだろう。

彼女の移送までの期間は早くて今後2年のうちが約束されている。サンクチュアリという環境が彼女にとってどう働くかはわからない。しかし、現在の貧弱な飼育環境から、彼女が健康であるうちに一刻も早く解放されることがのぞまれる。

2023年8月 8日 (火)

IWC,コガシラネズミイルカの絶滅警告

この8月6日、IWCは初の絶滅警告をコガシラネズミイルカに出した。

https://iwc.int/en/

コガシラネズミイルカは、カリフォルニア湾北部の、メキシコにのみ生息する2mにも満たない小型のイルカである。IWCによると、このイルカは1997年に570頭いたと思われているが、2018年には10頭しか確認できなくなった。原因は、同じ海域に生息しているこれも絶滅の恐れのあるトトアバという魚を漁獲するための刺し網による混獲である。トトアバは、コガシラネズミイルカとほぼ同じ大きさで、生息海域も同じくしているが、この魚の浮き袋が中国では高級食材、あるいは薬として珍重され、異常な高値がついている。

メキシコ政府は、2005年から、刺し網による代替漁法の奨励や生息海域の一部保護など、保護策を講じてきた。にもかかわらず、コガシラネズミイルカの混獲はおさまらず、生息数が増えることがない状態である。

IWCにおいても、この問題は毎回取り上げられ、早急な問題解決をメキシコ政府に求める決議を繰り返してきたが、刺し網によるトトアバ漁は継続し、密漁も横行(その金額の大きさから麻薬取引と比べられることも)、代替漁法は一向に進んでいない。

IWCは、トトアバの違法な国際取引が問題解決の壁となっていることを指摘し、直ちに、刺し網を100%他の漁法に変えない限り、絶滅は目前だと警告している。

 

 

2023年6月21日 (水)

アイスランド、ナガスクジラの捕鯨を一時停止!

アイスランドのメディア、アイスランドレビューによると、

https://www.icelandreview.com/news/no-whaling-this-summer-minister-halts-fin-whale-hunting/

アイスランドがナガスクジラの捕鯨が同国の動物福祉法に反するとの動物福祉の専門家会議の報告を受けて、8月31日まで暫定的に停止すると、同国の農水・食料大臣のSvandís Svavarsdóttir氏が発表したと伝えた。決定は政府のプレスリリースとしてウェブで公開されている。

"私は、動物福祉の専門家会議の明確な意見に照らして、捕鯨を一時的に停止する決定を下した。"と大臣は述べている。"私の中では、動物福祉法の条件は避けて通れない問題だ。政府と(捕鯨の)ライセンス保持者が福祉要件を保証できないなら、この活動には未来がない。"

すでに、ナガスクジラの致死時間が時に2時間近くに及ぶこともあるというニュースはBBCなどでもすでに伝えられていた。

一方、5月に同国のNGO、自然保護協会が行った食料安全の観点での調査の結果、ナガスクジラ肉がEUの食糧安全基準に合致していないと同国の食糧安全局を刑事告発している。

https://www.icelandreview.com/news/efta-surveillance-authority-to-investigate-whaling-in-iceland/?fbclid=IwAR0UGbfpWwrDZw0f4qfeuRaRGqpx7VKmzF4hp9H4szhe1zIT2u4eQ4Fl1DQ

今年度の捕鯨は停止されたが、来年度以降の継続はかなり難しい状況ではないだろうか。

一方で、アイスランドのナガスクジラは日本向けた輸出のための捕鯨である。日本(共同船舶)はこの2月に、借金をしてアイスランドから日本の商業捕鯨で捕獲したクジラの量を上回るかに思えるナガスクジラの肉を輸入している。これは、将来的な輸入が難しくなることを予想しての輸入だったのだろうか?

ナガスクジラはIUCNで危急種にあげられているというのに、日本では輸入を継続して利用し、一部がペットフードにも使われていることがわかっている。アイスランドの賢明な判断を称賛すると同時に、日本の責任は重いと考える。

 

2023年4月26日 (水)

備忘録ーIKANの参加したIWC本会議 5

2014

<IWC65回会議 ポルトルージュ・スロベニア>

○会議の内容

・ジェニーン・コンプトンーアントワンさんは、IWCで初の女性議長。カリブ諸島のセント・ルシア出身。

・科学委員会の今回議長は、東洋海洋大学の北門利秀さん。要領よく、端的(すぎる?)に科学委員会2年分の会合内容を解説。2013年、北西太平洋のミンククジラ(コモンミンク)の資源評価が終わり、2015年にはそのプロセスが終了と紹介。

・先住民生存捕鯨の議論で、前回の増枠の否決の後、内部的な協議が行われ、デンマーク政府とEUの共同提案による決議案(先住民生存捕鯨の尊重と管理の明確化)をパッケージで提出、コンセンサスでの採択を目指し、前回同様の対立の末、最終的に投票にかけられ採択された。

・南大西洋サンクチュアリ 今回はアフリカの関係国との協議をへて、合意文書「モンテビデオ宣言」が出されたことを報告し、コンセンサスを求めるも、捕鯨推進派の反対の声がおさまらず。

・日本の小型沿岸捕鯨に関し、日本は北西太平洋のミンククジラのRMP評価が終了した結果の捕獲枠17頭を持ち出した。しかし、調査捕鯨で実施している数と、混獲は勘定に入っていない。もはや、意地としか思えない提案。

・オーストラリアがRMPの枠の算出は8つのステップのうちの3つ目で、未完成と発言。日本(森下さん)は、もし8つのステップを踏んだら認めるのか?と質問した。日本としては、どうせ、過程を経て提案したとしても、反対するんでしょ?と念押ししたかったのかもしれない。

・モナコが再び、小型鯨類の国際管理を訴えた。決議案は採択された。

・食料安全保障の提案 飢餓の撲滅のためクジラも他の水産物同様利用対象に、という提案(2022年段階でまだ議論中)

・この年、3月31日に、オーストラリアが国際司法裁判所に提訴したJARPAIIの訴訟で日本は敗訴し、停止の判決が出たところから、、特別許可の是非を科学委員会のアドバイスの元で本会議で議論しようというニュージーランド提案。(日本はこれを『引き伸ばし提案』などと呼ぶ)。日本は、ICJの判決は日本とオーストラリア、ニュージーラド間の話だから、IWCの枠組みに拡大するべきではないとし、一方、南アメリカ諸国は、致死的調査を容認する可能性から、より厳しい内容を求め、まとまらない。

・日本は判決を受け、新たな調査計画を策定するとしている。

* ついでだが、日本政府は、このICJ判決で負けたところから、IWC脱退を画策し始めたということだ。振り返ってみれば、日本の沿岸小型捕鯨の提案のチャランポランさなど、それらしい兆候はあったはずだ。しかし、私たちは、調査捕鯨による業者救済が確かだったため、脱退しようとしているのに気が付かなかった!

・副議長を務めたベルギー代表が急病で帰国し、その後亡くなったことを受け、急遽次期議長の選出が行われ、議長は、ブルーノ・マイニニ氏、副議長は森下氏に決まった。

○ IKANの活動

・ 「調査捕鯨は税金の無駄遣い」というパンフレットを配布

2016

<IWC66回会議 ポルトルージュ・スロベニア>

○ 会議の内容

・激しい対立議論を禁止されてから、会議の受け入れ国に立候補するところがない。スロベニアが親切にも手を差し伸べてくれてまたしても開催地はスロベニア。もう、本拠地をスロベニアにしちゃったら?という声が聞こえるくらい。

・先住民生存捕鯨のWSで講演したアラスカ大学の政治科学者ドロー氏が先住民の権利についてレクチャー。このところ、国際会議での先住民の権利を評価し、その考え方に学ぼうという意向が強く決議などに反映されている。しかし、IWCではすでに先住民に対する捕鯨の管理は認められている。揉めているのは、その考え方に異を唱えるのではなく、枠の設定とこの時は違反に対しての合意形成なのだが。もっとも、枠の設定をIWCという機関が行うことそのものの束縛感が強いことが根底にあるのも確かだ。

・森下交渉間が2つのIWCを提唱。捕鯨推進は沿岸捕鯨や食料安保について検討し、反捕鯨はクジラ保全や環境、動物福祉を担当すればいい、と。

○ IKANの活動

・先にリリースした「日本政府の真北西太平洋鯨類捕獲調査計画(NEWREP-NP)の撤回を」という国内団体による共同声明を、NGO発言の機会をもらって発言。特に道東での起床個体群の捕獲への懸念を訴えた。

・ 23.7g改訂版を作成して配布。

 

2018

<IWC67 フロリアノポリス・ブラジル>

○ 会議の内容

・2000年から繰り返し提案してきた南大西洋サンクチュアリの成立を願って、満を辞してブラジル政府が主催したIWCだが、残念ながらその願いは叶わなかった。

・一方で、2006年のセントキッツ宣言に対抗し、クジラの非致死的利用と保全を訴える「フロレアノポリス宣言」が採択された。

・日本は、資源の安定しているクジラに捕獲枠を設ける附表修正と、保全委員会(日本的には保存委員会)に対抗した捕鯨委員会の設立提案。前回の森下提案の具体化した提案で、「これまで機能してこなかった管理機関としてのIWCの役割を果たすため、パッケージで提案。否決。これまでの議論から、なぜ絶対通らないような提案をしたのか?と幾つもの国が首を傾げるような提案だったが・・・・

* 採決後、谷合農水副大臣が「共存する可能性がないなら、あらゆる選択肢を考えざるを得ない」と。オオカミ少年かと思いきや、年末ギリギリに脱退が表明された。

○IKANの活動

・「日本のIWC改革案に反対する」というパンフレットを配布。

・ パンフの中身に沿って、再びNGO発言の機会をもらった。

・ 調査捕鯨による手厚い業者支援があってこそ継続してきた捕鯨に関して、まさか脱退して排他的経済水域内のみで商業捕鯨を再開するとは考えても見なかったことは残念なことだった。

・ 脱退後、毎日、中日・東京、北海道新聞、デイリー東北などから取材を受け、日本にとってのデメリットについて強調するも、国内ではさらに無関心が広がっている。

 

2021

<IWCバーチャル会合>

・コロナのパンデミックの中、いくつもの国際会議と同様に、IWCもオンラインでの会合を持ち、IWCの課題の1つとも言える、予算に関して、次の本会議までのつなぎ予算を決定した。日本という大きな資金源を失ったこともあり、今後の予算編成に真剣な議論があった。途上国から、パンデミック下での経済的な困窮を抱える現状から、分担金支払いが不能な場合の参加と議決権についての検討を行い、次回会議で結論を出すことも決まった。

・脱退後初会合には、森下丈治x諸貫秀樹氏の他に外務省漁業室長、政府系NGOの自然資源保存協会が参加した。

・IWCの発足から75年の節目にあって、国際NGO50余によるオンラインイベントが開催された。

 

2022 

<IWC68回会議 ポルトルージュ・スロベニア>

○本会議内容

・4年ぶりの対面会議が、3度スロベニアのポルトルージュで開催された。

・冒頭から、会議運営のための資金問題。なんと、締約国の84カ国のうち32カ国(捕鯨支持国)が少なくとも3年以上の滞納状態だ。これに対して、捕鯨支持側はIWCが経済的に破綻しているとしながら、一方で分担金を支払っていない国も投票権を与えられるべきと主張している。議論の末、2010,2011,2012年の滞納国は投票権を今回限り与えられるが、それ以前からの滞納国は投票権はなし。

・IWCの効果的な運営についての作業部会(WG-OE)の報告と議論。予算改革の議論では、3つの選択肢が検討された。1。赤字予算解消のため予算を減らす、2。予算を減らしつつ、締約国の分担金を増やす。3。締約国の分担金を図学して赤字を解消する。最終的な結論は、予算を減らしつつ、分担金の少ない途上国への負担は行わない形での締約国の分担金を増やすことで決着。

・投票権をめぐって、2010年より前から分担金を滞納している国の権利が失われたことや、捕鯨推進での参加国が少ないことから、附表修正(4分の3の票獲得)でのの可能性が大きくなった。そのことに危機感を抱いた捕鯨推進国は、傍聴参加の日本も含め、会議室から雲隠れして投票成立の必要な定足数を割ることに成功。南大西洋サンクチュアリの投票が阻害された。

・会議の構造的な改革で検討されていた管理委員会についてははっきりした結論は出ず。

・韓国が、捕鯨反対の立場を鮮明にする。国内世論を受けた転換。

・次回本会議はペルー、科学委員会はスロベニアとアンティグアで開催される。

○IKANの活動

・2日目のランチタイムに、捕鯨実施国の反捕鯨NGOの記者会見。しかし、今回会議での記者参加はほぼゼロに等しく、あまり効果はなかった。

・EIAのジェニファー・ロンズデールさんが、過去の貢献を称えてAWI(動物福祉研究所)からシュバイツアー・メダルを受賞。これは、1981年に、アルベルト・シュバイツアー博士が、動物の福祉に貢献した人に送ることをAWIに許可したもの。

 

2023年4月20日 (木)

備忘録ーIKANの参加したIWC 4

2010

<IWC第62回会議 アガジール・モロッコ>

○ 会議の内容

・ 「捕鯨をIWCが管理する」という強い意志を持って、満を辞して選ばれたチリのマキエラIWC新議長が病気のため会議不参加。のちにチリ代表も辞任するという事態に。

・ この舞台裏としては、日本の調査捕鯨に対して枠の削減→調査捕鯨の終焉というシナリオに、双方が納得しなかったことが考えられる。日本にとってその時点では調査捕鯨の終焉などありえなかったし、アイスランドとノルウェーは、提案にある自国流通に反発。また、韓国は、捕鯨に参画するつもりがあったため、実施国だけの議論に不満。一方で、国際的には、それまでクジラ問題に限定されていたNGOを超え、国際的な人権団体などが商業捕鯨再開反対を強く訴え、署名を開始した。また、海洋関係の科学者200人が商業捕鯨に反対する署名に名を連ねた。

・会議はコミッショナーによる非公開会議に移り、本会議の再開は2日後。

・ 民主党政権下で初めての会議であり、「政治主導」の旗のもと、参加を表明していた赤松農水大臣が辞任したことを受け、舟山康江政務官が出席。「科学を無視して市民の声を受け入れた」とIWCを強く非難。会場の多くが唖然。

・グリーンランド先住民生存捕鯨で物議を醸してきたザトウクジラの捕獲、EUおよび南米諸国の反対を宥め、かなり無理をしてのコンセンサス。グリーンランドで捕獲されるザトウクジラの個体群は、カリブ諸国から毎年回遊。繁殖海域のカリブではウォッチングで人気がある。

○ IKANの活動

・ 日本沿岸の希少個体群J-stock混獲の実際を黥研レポートをもとに作成し配布。

・会議前に、民主党議員に対してクジラ問題について説明に回った。

・2010年は、日本で生物多様性条約第10回会議が開催された年でもある。2009年に、CBD市民ネットの世話人の一人として、沿岸・海洋の作業部会を立ち上げ、アガジール前にもナイロビのSABSTTA(科学技術助言機関会合)に参加したり、CBD事務局の海洋担当のリー博士をお招きして集会を持つなどし、その後COP10の参加と、直接的にクジラではないが、多忙な1年だった。

・PEWの呼びかけで、会議直前にサメのワークショップを開催する企画をだし、先方は予算も出してくれたのに、作業部会長はPEWも反捕鯨団体と思ったらしい。イベントを進めるIKANに対し、「クジラ問題を扱ってるところは、シーシェパードと同類のテロリストとして疑われる。作業部会に漁業関係者が来なくなる」と、IKAN排除に乗り出したため、せっかくの良い機会を失ってしまった。

2011

<IWC63回会議 ジャージー・イギリス>

○ 会議の内容

・日本の要望で、初めに会場の安全な航行ー調査船妨害に対する非難。コンセンサスで。

・会議の運営 参加費の支払いは、現金や小切手、クレジットカードではなく銀行振り込みによるものというイギリスからの提案。これまでの票買い疑惑に対して、支払いの透明性を高める狙い。当日カバンに詰めた現金を持ち込んでいた国もあったらしい。

・定足数の操作!日本は小型沿岸の提案を今回断念したので、サンクチュアリ提案も断念すべきと主張。どうしても投票に固執するなら、捕鯨支持国は会議場の外に退出すると。2022年のスロベニア会議ではこれを実行に移し、投票を阻止したわけで、ここで実験したのだった!この時に回避作を講じるべきだったよね?IWC !

○ IKANの活動

・「もうきっぱりやめよう!調査捕鯨」日英でのパフレットを作成し、配布。

・調査捕鯨問題に関し、民主党議員への働きかけを試みた。筒井康隆農水大臣(当時)が、その後「有識者の検討会を設けて検討する」という記者発表。1986年に開始して以来初めてのことだったが、実際は水産庁主導で非公開で開催され、参加委員の中に海洋や鯨生態に関する専門家はいない。そのうえ、第1回目で検討会の名称まで「今後の調査捕鯨のあり方について」から「鯨類捕獲調査を安定的に実施数ため」に変更。理由について宮原水産庁次長(当時)は変更理由について「鯨類捕獲調査をやめることを議論するのではないか」あるいは「否定的に議論するのではないか」という意見があったため、と返事。

中間取りまとめは以下(最終取りまとめは見当たらず):

https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/enyou/pdf/chukantorimatome.pdf

・2011年は忘れもしない、大震災の年だった。いまだにその傷跡が修復されたわけではないし、この6月には、福島原発敷地内の放射能汚染水が満杯になるから海に流すという話もあり、相変わらずの日本の態度に腹が立つが、この震災の年に組まれた補正予算でなんと震災のための復興予算が、調査捕鯨のため(というより鯨研の赤字補填)に使われたことが明らかに。

2012

<IWC64回会議 パナマ>

○ 会議の内容

・空席だった議長のワンポイントリリーフとしてブルーノ・マイニニ(スイス)氏。非常に公正で冷静沈着な、議長役として最高。

・南極のミンククジラの推定個体数、51万頭で合意。

・南大西洋サンクチュアリ またしても否決

・グリーンランドが、前回会議でのかなり無理筋提案を受け入れたのも束の間、再びザトウクジラの増枠を要求。さすがに否決。2002年アラスカ以来の出来事。

・またしても海の航行安全についての議論。

・調査捕鯨 JARPAIIの評価が2014年に発表される予定。

・何と、韓国が調査捕鯨の自国内海域での開始を宣言(ただし、帰国後すぐに取り消された)

・モナコ クジラの多くは高度回遊の種で、国連海洋法条約でもその管理に特別な必要性を認められているが、IWCが管理するクジラ類は限定的なので、クジラに関する専門家が集まるIWCが国連との共同管理を行おうという提案。しかし、捕鯨関係者は現在の管理する種に限定し、また他の小型鯨類は扱いたくないので反対。

・小型沿岸捕鯨 コンセンサスができないため持ち帰り 「先住民生存捕鯨のみ認めるのはダブルスタンダード。農業や林業は商業性を認められているじゃないか」

・パナマ以降、IWC本会議は2年に一度開催に決定。

○ IKANの活動

・日本人がどの程度鯨肉を消費しているのか、ということを明示するパンフレット「23.7g」を配布。実は、日本人が年間一人食べるのは23.7gで、チョコバーくらいの大きさということを示すのは、日本がクジラをものすごく食べているかのように思っていた海外の人たちへの贈り物。

2023年4月19日 (水)

備忘録ーIKANの参加したIWC本会議−3

2008年

<IWC60回会合 サンチャゴ・チリ> ←この年から、Ikaーnet日記に記録があるので、詳細はそちらで。

http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2008/07/iwc_833d.html

○ 会議内容

・ホガース議長(米)のリーダーシップのもと、3月に中間会合が開催され、妥協の難しい課題を除き、合意できる可能性のあるところを本議会で討議、妥協の難しい課題は賞作業部会で非公開に議論されることになった。対立の明らかな33項目については、個別項目で解決するのではなく、パッケージで「取引」できる状況に導き、問題解決を図る、という方針で、基本的に採決はなし。

・「IWCの未来」と名付けられている議長サマリーでは、1。会議の実質と手続き場の改善 2。個別論点と合意形成の可能性について3つのAnnexに収められている。

・Annex A 手続きの改正ー1。事前の合意形成を求められ、対立する見解の解決は議長裁量で。決議案の提出時期を会議60日前にする(それまでは前日)2。新参加国は、参加承認の30日後に投票権付与。3。公用語は英語だが、作業言語としてフランス語とスペイン語使用。

・AnnexB 実質的議題進展のための小作業部会の設置。各24ヶ国が参加し、扱うテーマをパッケージとして検討し、合意形成に持っていく。テーマは、会議の目的、海洋のガバナンス、モラトリアム、調査捕鯨、日本の小型沿岸捕鯨、科学委員会の機能から倫理と福祉、海洋保護区気候変動など。

・AnnexC 科学委員会に関する諸問題。結論を本会議と切り離した際の影響、途上国の科学者の参加、キャパビル、招待科学者に関して。

・オーストラリア環境相のピーター・ギャレット(もと人気バンド’ミッドナイト・オイル’のリードボーカル)が、南大洋における非致死的調査の開始を宣言。IWC科学委員会のもと、国際的な共同調査でのクジラ類をはじめとする調査で科学的知見を収集し、保護と管理に貢献するとしており、これまでも着々と実績を上げている。以下のリンクで確認できる。

https://www.marinemammals.gov.au/sorp/

・小型沿岸捕鯨に関して、再び「商業捕鯨そのもの」という批判。

・調査捕鯨に関しては、2006年のJARPAの評価から、科学委員会が「科学調査=調査捕鯨の致死的調査にはIWCの評価が必要」と報告。調査結果として18年間で数千頭のクジラを殺し、100億もの税金を費やして、ミンククジラの推定個体数はもとより、目的の1つである自然死亡率(〇から無限大)もわからなかったのだ。(森下コメント「21世紀には他の動物を殺してはいけないという話ならわかるが、なんでクジラはいけないの?」)

・NGO発言の再会。今はなきジョン・デンバーが。NGOのプレゼンテーションとして歌を歌って以来、禁止されてきたNGOの発言が両陣営のNGOそれぞれ3団体ずつ許された。日本からは捕鯨推進側のウーマンズフォーラム魚と反捕鯨の立場からグリーンピス・ジャパンが行った。ただ、議事内容と関係ないところで、一緒くたに発言されることに意味があるだろうか?

○ IKANの活動

・会議前に、小型沿岸捕鯨基地の予備調査をし、それをパンフレットにまとめた。問題点として、「捕鯨基地は必ずしも捕獲地ではない(日本政府が主張した地元のみの消費に当てはまらない可能性)。例えば、合致するのは宮城県鮎川のみで、捕鯨の歴史を誇る太地ではかつてミンク鯨領が行われていた当時でさえ、ミンククジラの捕獲はない。網走はJ-stockの捕獲を回避するためこの時点では捕鯨は許可されていなかった。核基地では食文化よりも業として鯨肉を販売。千葉県和田では伝統的に利用されてきたのはツチクジラ。他にももし、沿岸捕鯨が開始されたとして、調査捕鯨との肉の区別はどのようにするのか、という疑問など。

・会議とは直接関係ないが。

 私がどうしても一度は地理を訪れたかった理由は、ビクトル・ハラのいた場所をこの目で見たかったからだ。彼は、シンガーソングライターで、ギター1つで同胞の思いを歌い上げ、アジェンデを助けたのだが、クーデターにより逮捕され、虐殺された。もう40年も前の話だが、彼の歌は今でも歌い継がれており、日本でもデモで、彼の歌「平和に生きる権利(El derecho de vivir en paz)」が歌われるようだ。チリの若いNGOに聞いたところ途方に暮れた顔をされ、(政治的すぎるのか)と残念に思った。彼の生き様は、とても尊敬できるし、作った歌だって普通にすごくいい歌なのに。

 会議は、サンチャゴの市街地と少し離れたいわゆる高級な住宅街だったので、最後の日に地下鉄で、ダウンタウンに行った。まずものすごい人混みの活気に気圧されてしまってまんまとカメラをすられてしまった。しかし、ストリートバンドのグループの一人がビクトル・ハラのTシャツを着ているのを見て気を取り直した。そして、サンクリストバルという巨大なキリスト像のある町外れの埃っぽいテントに偶然みつけ入ってみると、なんと、私の好きな「鋤(El Arado)」が聞こえてきた!早速入って見ると、土産物を売る初老の少し疲れた男の人が俯いていた。「ビクトル・ハラでしょ?」と聞くと、頷きながら「人間の歌(Canto a lo humano)」のMDを掲げて見せてくれた。時に、IWC参加は、こんなご褒美をくれる。

 

2009

<ローマ中間会合 ローマ・イタリア>

○ 内容

・すでに2回行われた非公開の小作業部会(モラトリアム、調査捕鯨、日本の沿岸小型捕鯨)についての報告が行われた。作業部会では、客観的な外部専門家として招聘されたデ・ソト大使の仲介で、議長による調査捕鯨の枠の削減→消滅と沿岸捕鯨再開がパッケージで提示。日本は調査捕鯨の中止はあり得ないと返答。

・内容的には激しい議論こそないが、内容はどちらも変わらない。

・南極の調査捕鯨を妨害するシーシェパードに関する非難で終始。

○IKANの活動

・NGOとしての5分間スピーチで、課題解決に向かっていることを歓迎するが、沿岸小型捕鯨再開で気希少個体群J-stockへの配慮がないことを指摘。また、ニシコククジラとともにクジラの混獲回避に向けてアクションプランの作成を提案。沿岸捕鯨基地の現状を紹介し、調査捕鯨と沿岸小型の両方が実施された場合の肉の区別はできないことから、モラトリアムの元で沿岸捕鯨再開はありえない。

 

<IWC61回会議 マデイラ・ポルトガル>

○ 会議内容

・日本政府の正常化への貢献ー日本が本来認めていない保全委員会の検討議題やIWCの管轄街の小型鯨類の議題削除を求めない。サンクチュアリを容認、調査捕鯨の捕獲数の削減を譲歩の印ともちだした。

・森下コメント「漁獲減少がクジラのせいだとは言っていない。その可能性を検討するためにクジラと魚の関係を調べる」捕鯨はしないし、クジラも食べないが、増えすぎたクジラが自分たちの魚を横取りするので、捕鯨は食糧安全保障上必要、と叫んでいた(今も叫んでいる)参加国にさしたる動揺も見られないということは、彼らも元々信じていなかったのだろうか???

・ミンククジラの推定個体数、まだ結論に至っていない。・・・が、これまで日本がIWCに協力し、個体数推定のための目視調査船の貸し出しを突然打ち切る。

・北西太平洋の調査捕鯨についても議論があった。沿岸の希少個体群への影響懸念と同時に、アメリカは、日本と韓国で増えていて、調査捕鯨を上回る混獲の回避のための韓国をすべきだとした。(中間会合で発言が少しは役に立った?)

・太地・三軒町長「調査捕鯨なしには日本の捕鯨はない」

(確か、2016年に意見交換した時にも、彼は『(同じ小型捕鯨協会の)S氏が商業捕鯨再開と言っているのは間違っている。再開すれば、小型は立ち行かなくなる、とおっしゃっていたのを覚えている)

○ IKAN の活動

・沿岸の小型鯨類の捕獲について日・英でのパンフレットを作成し、配布した。

 

 

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