ソフトなやり方で・・・

 知り合いが、「韓国で、人気ドラマの影響でイルカが解放されたらしい。」とリンクを送ってくれた。

https://www.youtube.com/watch?v=LINfGgNmsh4

何でも、ドラマの中で主人公が’水族館はクジラの監獄です’というセリフがあって、済州道で水族館飼育されていた最後の1頭のミナミハンドウイルカが解放に向けてリハビリを受けている。韓国では、2015年にも違法に捕獲されたイルカが解放されたという話が確かあったと記憶している。

https://japanese.korea.net/NewsFocus/Society/view?articleId=128106&pageIndex=18

別の知人が、IKA-NET NEWSの感想として、「難し過ぎて一般はついてこられない、漫画にでもしたらどう?」というメールをくれ、少し考えていたところでもあったので、どんなドラマなのか見てみた。主人公は、自閉スペクトラム症の若き弁護士で、幼い頃からクジラが中心という感じで、何かというとクジラにたとえて同僚からうるさがられているが、その彼女に惹かれる調査員がまだイルカをみたことがないという主人公に、うっかりと「水族館には行かないの?」というようなことを言ったため、水族館ではイルカがどれほど苦しむかを彼女が捲し立てるシーンがリンク先にある。

それだけではなく、何か問題に突き当たったりした時、解決のためのインスピレーションでは、ザトウクジラの大ジャンプやイルカたちがジャンプする場面が描かれ、解決した後は、高層ビルに並行してクジラが空中遊泳したりするのだ。子供たちの受験地獄が描かれるところでは、背鰭が折れ曲がったシャチが登場という具合。

IWCでは韓国は数年前まで日本に同調し、捕鯨推進の立場であり、一度は調査捕鯨をやるとか言ってみんなをびっくりさせたこともあった(すぐに撤回したが)。また、蔚山では相変わらず、混獲されたとされるミンククジラ肉が結構の数販売されていたようだが、こうしたドラマに人気が集まるということは、確実に世論が変化しているということだろう。

そういえば、BTSのベガスのコンサートのフィナーレでも、クジラたちの模型が空中遊泳していたし。

日本でリメイクしたいという話もあるそうなので、下手な漫画よりもこちらを頑張ってもらうことにしようと考える怠惰なわたし。

 

2022年9月 9日 (金)

富戸、イルカ猟返上!

 懐かしい方から久々の電話があった。富戸の元イルカ漁師で、今はイルカウォッチング船、光海丸の船長さんの石井泉さんだ。彼は開口一番、「富戸がイルカ猟を返上しましたよ!」と元気にいう。

富戸は、日本国内で2箇所あるイルカ追い込み猟の実施地域の1つだったが、実際は2004年に行われた追い込み以来は、水産庁から捕獲枠は示されてきたものの、捕獲はしてこなかった。ここ1、2年は、毎年8月に行われた「イルカ取るぞ!」宣言もなくなって、実際は断念したようなものだったのだが、やっと「返上」という言葉を明るみに出せることになった。

「あれから26年ですよ。」と石井さんは感慨深げに続ける。これまでのブログで見ていただくとわかるように、「あれから」とは、私たちがイルカ猟に遭遇し、反対する行動を始めた1996年から、26年の年月が過ぎたということだ。長いようで短かったこの26年。

石井さんは、1993年にイルカの捕獲枠が定まったことを幹部から知らされないまま、1996年の捕獲の後のテレビ局の取材に対して「漁師が捕獲した獲物を全て水揚げするのは当たり前」と発言。その後で、捕獲枠のことを知って愕然とし、組合内部で問題をきちんと解決しようとしたのだが、組合内での反発が激しく、一人、村八分ような立場になった。私たちも何とか彼を支援しつつ、イルカ捕獲問題を広めてきたが、国内での支援の輪はそれほど広がらなかった。彼はそれでもめげずに、海外NGOの助けを借りてイルカのウォッチングを開始する。

元々、いまの追い込み猟のかたちは伊豆地方で始まったようだが、そのことが仇になって、70年、80年代にイルカを取り過ぎ、4箇所あったイルカの各地は次々撤退、かろうじて踏みとどまった富戸においても、コンスタントな収入源になったというよりは、たまさかのボーナス程度の経済性でしかなかった。しかし、近隣水族館の要望もあり、肉というよりも生け捕りによる収入は魅力的であったらしく、なかなか引くことにならなかった。

しかし石井さんも黙ってみていたわけではなく、イルカを追い込む湾内への定置網の誘導提案など、イルカの追い込みにく状況作りに努めてきた。定置網を湾内に設置してから10年、そこそこの売り上げも見込まれる状況も生まれ、伊東市漁協の運営ではなく、富戸在住の理事の一人がその定置網漁業を漁協から買いとり、法人組織化を試みた。それまで漁協が唯一の水上げ魚の市場だったものが、これによって販売努力さえすれば、複数の市場でより高く売れるということもあり、定置網業者にとっても、またその維持運営での経費削減を見込まれる伊東市漁協にとっても言ってみればウィンウィンの関係となったようだ。

石井さんは、これからさらに「イルカを平和な海のシンボルに」という運動を加速させるべく張り切っている。

ウォッチング事業の方は、震災や海難事故でなかなか困難な状態ではあるそうだが、イルカのため、海と海に生きる人々のため、ぜひウォッチングを応援して欲しい。

 

 

 

2022年5月17日 (火)

鯨の肉がペットフードに

  プレスリリース

「 鯨肉消費あがらず ペットフードにまで・・・」

 

3年越しで続くコロナ禍による経済の停滞に追い討ちをかけるようにロシアのウクライナ侵攻が私たちの暮らしに影を落としています。そんな最中に、政府はさまざまな問題を含む2022年予算案を閣議決定しました。その中に、今年度も捕鯨に関する予算およそ51億円が組まれていることは非常に残念です。

4年前の20181228日、当時の官房長官、菅義偉氏は日本が国際捕鯨委員会を脱退し、商業捕鯨を開始すると発表しました。そして翌年7月、大型の母船式捕鯨会社1社と沿岸の小型捕鯨業4社が商業捕鯨を開始しました。

しかし、それぞれの企業体の必死の努力に関わらず、減少した鯨肉需要は戻らず、在庫は積み上がり、捕鯨産業はもはや政府の支援なしで自立するのは難しいことが明らかになっていますが、一方で政府は、補助金による捕鯨業支援は打ちきる予定であるとしています。

母船式捕鯨を行う共同船舶は、母船の老朽化のため、新たな船の建造を計画するほかありません。新造船にかかる費用は、一部下関市が持つほか、クラウドファンディングでの調達に期待していますが、現状を考えると捕鯨船としての利用だけでは無理があるように見えます。

こうした現状を打開するため、業者はこれまで学校や医療機関への大幅な値引き販売、飲食店への直販、鯨肉の風味を良くするための加工方法の変更、鯨脂アイスや鯨肉タルタルなど新商品の開発に励んでいますが、生鯨肉の売れ行きが比較的好調なのに比べ、冷凍肉の需要は依然として低く、鯨肉はペットフードに行き着くことにもなったようです。

202111月の日本のペットフード市場の分析では、イワシクジラ、ミンククジラ、ナガスクジラを原料とする61種類の加工品、冷凍品、フリーズドライ品、製品を製造・販売する日本企業が34社あることが判明しました。

50以上の製品が犬を対象としており(生肉、パウチ入り加工肉、乾燥ジャーキー、フレーク、ビスケット、フリーズドライのキューブなど)、さらに10製品が猫またはその両方を対象としていました。また、鯨の脂身を原料としたオメガ3サプリメントも販売されています。

これに対してIKANは「日本は、捕鯨が伝統的な産業だと主張し、商業捕鯨を再開しましたが、ペットフードの利用は明らかに伝統とは言えません。アイスランドやノルウェーにおいても鯨肉の需要は減少し、遠からず商業捕鯨から撤退することが推測できる中、このような無理な利用までして商業捕鯨を継続するのは間違いです。さらに食の変化だけではなく、海洋環境の悪化による様々な影響が国際的な懸念となっている今、商業捕鯨という選択を再考し、これまで注がれてきた努力を海洋環境の健全化に集中し、その実りとしての水産業の発展に切り替えるべきではないでしょうか」と述べています。

2022年3月 4日 (金)

水産基本計画(案)への意見〜「象徴的意義」って・・・

昨日締め切りだった掲題のパブコメに意見を提出した。

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「象徴的意義」としての捕鯨は水産基本計画に必須ですか? 

2019年に再開された日本の商業捕鯨は、鯨肉消費の落ち込みによって将来的な展望を持ちません。

開始当時から2022年まで、事業者は採算性の見込みを持ち得ないまま、補助金に頼ってここまで来ました。

しかし、事業者たちも、将来にわたって、補助金頼みで事業を継続するのはむずかしいと考えているはずです。

今年になって沿岸基地式捕鯨を行ってきた3社が共同で事業を行うと発表しました。母船式捕鯨の共同船舶も、

現状では経営的に成り立たないことを訴えており、さらには老朽化した母船に代わる船の建造の必要性も

大きな重荷になっているはずです。商業捕鯨を実施してきた日本、ノルウェー、アイスランド3カ国のうち、

アイスランドは、2024年から捕鯨の捕獲枠を付けない決定を行い、事実上捕鯨事業から撤退します。

ノルウェーにおいても鯨肉消費は落ち込み、捕獲枠よりはるかに低い捕獲実績であるにもかかわらず、

鯨肉の一部がペットフードに加工されていると聞きます。これらのことから、今世界で、商業的なクジラの

捕獲及び利用は必要ないのではないか、と推察されます。

 「水産物の安定供給の確保」と「水産業の健全な発展」が基本理念ですが、ここに書かれているのは、

抽象的な「象徴的意義」のもとで「科学的根拠に基づいて持続的に利用」するという一般的な方針です。

また、事業の継続に関しては、コスト削減や販路開拓や高付加価値といった、掛け声に終わっているように

感じられます。 捕鯨に関しては、商業的な形態からいっそ離れて、伝統文化などとして必要最小限に

縮小して継続する代わりに、政府の補助を受けられるような形や、大型船舶に関しては資源調査でなく、

 

生態や、気候変動など海況の変化にともなう海洋生態系における役割を調査し、発表するといった海洋調査船

への転換も考えられるのではないかと思います。近年、国際通貨基金をはじめ各種機関がクジラの海洋生態系

における役割や価値について発信しています。そうした科学調査を推進する方が、国際的な信頼関係も築くことが

できるのではないでしょうか。

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 P21ウ)捕鯨政策 

国際的な水産資源の持続的利用の推進において象徴的意義を有する鯨類に関して、我が国の立場に対する理解の拡大を引き続き推進する必要がある。また、大型鯨類及び小型鯨類を対象とする捕鯨業は、科学的根拠に基づいて海洋生物資源を持続的に利用するとの我が国の基本姿勢の下、国際法規に従って、持続的に行う。 このため、「鯨類の持続的な利用の確保のための基本的な方針」にのっとり、科学的根拠に基づき、鯨類の国際的な資源管理とその持続的利用を推進するため、鯨類科学調査を継続的に実施し、精度の高いデータや科学的知見を蓄積・拡大する とともに、それらを IWC(国際捕鯨委員会、オブザーバー参加)などの国際機関に着実に提供しながら、我が国の立場や捕鯨政策の理解と支持の拡大を図る。また、鯨類をはじめとする水産資源の持続的利用の推進のため、我が国と立場を共有する国々との連携を強化しつつ、国際社会への適切な主張・発信を行うとともに必要な海外漁業協力を行うことにより、我が国の立場の理解と支持の拡大を推進する。 さらに、捕鯨業の安定的な実施と経営面での自立を図るため、科学的根拠に基づく適切な捕獲枠を設定するとともに、操業形態の見直し等によるコスト削減の取組や、販路開拓・高付加価値化等による売上げ拡大等の取組を推進する

 

2022年2月 7日 (月)

太地シャチ捕獲から25年

1997年の今日、2月7日に、太地にシャチの家族10頭が追い込まれた。この件については、ブログで何回も書いているので詳細はそれに任せるが、4半世紀前のことであるのに、いまだに強く記憶に残っている。このところ、資料整理を行なっており、昨年10月にも少し詳しい情報を掲載したところだ。

http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2021/10/index.html

このところ、意見交換ができていないが、関係者の話では1昨年あたりでも、やはり、高額取引できるシャチの捕獲は魅力的らしいことが伺えた。幸いなことに、日本国内での捕獲は止まったままだし、また次の捕獲地になったロシアでも、海外への移動はできなくなったというニュースがあり、また捕獲は科学目的か教育目的に限られ(まだ懸念は残るが)、枠の提示は停止されているというのは喜ばしい。

ただ、それで問題解決というわけではなく、人間活動による海洋の汚染が、世界各地のシャチをはじめとしたクジラ類を苦しめていることは度々ニュースになっている。とくに、海の食物連鎖の頂点にいるというところでは、1990年代からシャチに溜まった高濃度の化学物質汚染が懸念されてきた。アメリカのサザンレジデント個体群の化学物質汚染と餌生物減少による激減は繰り返し問題となっていることは既知の話だろう。

日本の’国際漁業資源の現況’では、とてもたくさんいるかのように書かれているが、現実を見据え、きちんとした科学調査とその上での保全の前向きな施策が望まれる。

2022年2月 5日 (土)

アイスランド捕鯨撤退

AFPは、アイスランドが2024年に商業捕鯨から撤退すると伝えた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3a5a1ce71374d77ff1872c3e146d589a09f5b681

それによると、(漁業相の)スバーバルスドッティル氏は、現地紙モルゲンブラディット(Morgunbladid)に対し、捕鯨数の年間割り当てが終わる2024年以降、「捕鯨を認めることを正当化できる理由がほぼなくなる」と説明。捕鯨に「何らかの経済的メリットがあるという証拠はほとんどない」と述べた、そうである。

しかし、これはすでにミンククジラの捕鯨業者2社のうち、1社が撤退した2020年段階で予想できたことだ。アイスランドの捕獲枠は、2019年〜2023年の間年間ミンククジラが217、ナガスクジラ209頭だが、この3年間でミンククジラが1頭捕獲されただけ。大きさからいうとミンククジラの2倍半ほどあるナガスクジラは、ほぼ全てが日本向けにクバルルという個人企業が捕獲し、輸出していた。しかし、日本が商業捕鯨を開始したことや、輸出するべき鯨肉の品質にも問題があり、このところ輸出も奮わない状態で、国内にそれほどの需要があった訳ではなく、漁業が盛んなアイスランドにあって捕鯨業が占める位置が大きかったわけでもないのだ。

さらに、自国海域における海洋保護区の拡張や、NGOによって設置されたサンクチュアリが存在し、クジラの捕獲が近場でできなくなったことも捕鯨業にとっては打撃だったろう。

また、例のパナマ文書スキャンダルで時の首相が退陣した後、選挙で選出された首相は、左派の緑の党のカトリン・ヤコブスドッティル氏。流れとしては至極当たり前のことだ。

人口およそ36万人という小国ながら、人権や女性の権利で先進的な役割を果たしているアイスランドだから、こうした結果も受け入れやすいのだろうと思う。

翻って日本はどうなのか?

業の継続には足りない捕獲割り当てにも関わらず、また、業者の涙ぐましい努力にも関わらず、鯨肉需要は減り続け、在庫が積み上がっている。もともと補助金なしには継続が難しい業種であったのだが、そろそろ政府も梯子を外しにかかっているようで、表看板はおろさないものの、内実としてはどうやってうまく転換を果たそうかと考えいるのではないか、とさえ勘ぐれるようなおかしな動きがあるように思える。まあ、日本の伝統として、’すっぱりきっぱり’ではなく、あいまいに、なんとなく消えるような当たり障りないやり方が通りやすいということなのかもしれない。

 

 

2022年1月21日 (金)

生物多様性国家戦略の検討

1992年5月、生物多様性条約が採択され、日本は翌年の5月28日に同条約を批准した。それ以来、日本は条約の求める国家戦略を5回、改定した。そして、名古屋における第10回条約会議で採択された愛知目標の見直しを経て、新たな政略策定に向けた検討が進められている。

2002年の新戦略以来、なんらかの形で議論に参加してきたが、この20年間感じ続けたことは、「歯がゆい」「まどろっこしい」ということだ。元々、「生物多様性」という言葉の曖昧さも手伝って、さらに条約そのもののあり方がどんどん抽象化していることも一因だろうが。日本国内で海洋の保全が蔑ろにされてきたことが腹立たしいということもあるが、度重なる改定の中で、大筋では抽象的に過ぎ、瑣末なところで具体的過ぎるというあり方にあまり変化は見られない。

 

1月19日、環境省による3回目の生物多様性国家戦略小委員会が開催された。

資料は以下。https://www.env.go.jp/council/12nature/y128-01b.html

検討委員は資料にある18人で、委員長は中静透 氏( 国立研究開発法人森林研究・整備機構 理事長)。
議事はYouTubeで配信された。

3時間余で行われた議論は、大筋の構成のあり方から、細部の行動計画にわたり、委員からの山盛りの注文があって、この後の環境省の仕事が思いやられる。ここまで、政府が手取り足取りしなければならないのかなあ、という疑問の残る意見もあるし、1つ1つが認知度の高低の問題というより、「知った以上は引き受けなければならないけど、あまり嬉しくないなあ」というような義務感が先行しては前に進みにくいのでは、という懸念もある。

本来は、人々の生活における質と豊かさとして評価されるべきところが、(そうしなければヤバイらしい)というようなおどしでは、結局は個人的な生活の質や豊かさの認識に、つながってこない気がする。

委員のうちの何人かは日本古来の伝統的なあり方や考え方について言及し、明記するように提案していた。ここでも同じような気がかりがある。かつての文化がそのまま受け継がれることが難しい時代の変化は半端ではない。近代化によって生活が劇的に変化してくる中、価値観が変化してしまった。伝統的な文化を受け継ぐということは、日々の暮らしをなんとか凌ぐ中で「余裕があれば」という位置に押しやられてる現状を打開できるのだろうか。それでなくても「伝統文化」というものが、しばしば自分たちの理屈として都合よく利用されてきたことは今更いうまでもない。

また、1992年リオサミットで生まれた’持続可能な利用’という言葉が日本では大いにもてはやされてしまった訳で、「持続可能性」という言葉をどう使うか、もう少し丁寧に考える必要もありそうだ。

本当に綺麗な空気とか、清涼な水とか、汚染されていない大地、そしてそこで育まれる命たちへの渇望みたいなものが意識下で育っていかない限り、表面的な方法論をやり取りしてても’行き着くところに行くだけ’じゃないのか、と斜めに見てしまうのは悲しいが。担当者の方たちの真剣さに疑いはないものの、’環境省’という行政が、本気で変革を求めているとも思えず。

1つ面白かったのは、どれだけ本気なのかわからないが、よりによって経団連のひとの口から、経済成長がよいことだということの上にたったGDP一本槍への疑義が語られ、生物多様性保全への道筋を、社会資本から、コモンズへの価値観の転換や自然資本の価値などを認識する上で生物多様性がきっかけとなると 提案されたことだ(まあ、経団連だから言えたのかもしれないが。ただし、「生物多様性が成長の一要素」というのはこれまでの話ではないか。脱成長とは言えないのだろうが????)。国家戦略のこれまでの流れの中で、経済的な停滞を嫌う優柔不断さが、戦略の実効性を大いに削いでいるのではないか、と感じてきた。土台が傾いているのに、屋根瓦を修理していてどうするんだ?じゃない?

 

2022年1月14日 (金)

日本の海生生物・保全と利用のギャップについて

 一昨日、久しぶりに鯨研通信が届いた。第491号、発行日を見ると2021年9月とある。ははあ、さてはIKAがもう消滅したと思って発送しなかったな。ところが、年末にIKAニュースが届いて(あれ?まだあったわ)と、律儀に送ってきたんだな、ととりあえず感謝。

鯨研通信は、こちらのニュースと「交換こしよう」と言ってきたのはあちらであり、それから多分20年近くだと思うが、ニュースの交換は続いてきた。普通は入手できないような情報に触れることができて、たとえば、希少個体群、J-stockの混獲が日本沿岸で広域で認められたことなど、使わせていただくような資料もある。

今回は、資源調査にドローンを使っているという報告で、スナメリに関する調査も昨年行われたことを知った。ただし三河湾だけ。

また、「水産白書」に見る捕鯨論という小野征一郎という方の寄稿文もあったが、それを見ると、政府の白書であるにかかわらず、なんだ、捕鯨推進プロパガンダをそのまま使っているじゃないか、という今更ながらの残念感があった。まあ、書いた方自身そのスタンスに一分の迷いもないから書いたのだろうけど、参考文献として(水産白書のではない)、都合よく真田さんや佐久間さんの書いたものを利用しているのもどうかと思った。

まあ、日本のご立派な水産学者先生の(多分)多くが、確信的であるかないかは別として、捕鯨推進の立場の擁護をしているのだから驚くこともないが。

そういえば先だって、生物多様性国家戦略の新たな策定に向けて、ちょっとした意見を環境省に申し上げたので、その要約を書いてみようと思った。

ちなみに私が国家戦略の策定プロセスに何らかの意見を言ってきたのは2002年の新戦略以来なので、驚くことに、20年間もいちゃもんを言い続けたことになる。初めて国家戦略が策定された時は、各省庁が勝手に書いたホッチキス留めであったので、新戦略の担当課長は大張り切りで、きちんとした戦略を作り上げようと部下に発破をかけた。また、一部ではあるがNGOからの意見も聞く場を設けた。しかし、海洋に関しては、環境省と水産庁がきっちりと縦割りを維持しており、捕鯨については、水産庁が推進の立場を意気揚々と述べるという感じで、鯨が魚を食べすぎて漁業者が困っているみたいなことも平気で書いていた。環境省の担当者に、あんな科学的でないこと書いたら恥ずかしいでしょ、と削除してもらおうとしたが、水産庁は聞き入れない。しかし、局長の懇談会で図らずも、海生生物の保全と管理についてフロアから発言して受け止めてもらうという第一歩があった。

と、ちょっと脇道に逸れたが、昨年末のIKANの意見を少し書いてみる。

・国家戦略における海洋の部分は20年経ち、当初から見れば前進していると考えられる。COP10前後には、海洋生物多様性戦略がつくられ、また、条約で求められているEBSAs(重要海域)選定も行われた。海洋生物レッドリスト作りもあった。

・しかし、一方で、環境省は相変わらず、陸を主眼とし、広域であるにかかわらず、海の保全には及び腰である。今回の国家戦略研究会を見ればわかるように、海洋の専門家は12人中たった一人でこの状況は数年来変わっていない。課題においても海洋に関しては乏しい。

・2017年の種の保存法の国会議論での問題指摘に対し、当時の山本環境大臣は、環境省は船舶を持っていない、と答弁した。船に言及したのは初めてではあるが、これまでも悉く海洋に及び腰の理由として「データがない、予算がない、人もいない」ということを挙げてきた。しかし、水産庁と同じ規模で実施する必要がどこにあるのか?水産庁が持つデータなり予算なり人なり、船で得られるものを水産庁を手足として利用すればいい話で、これは「生物多様性基本法」によって国家戦略が国の法律になっているので『筋」である。

・なかなか、力関係で弱いというのだろうが、現在、増加を求められている海洋保護区に関して、重要海域の科学的根拠によってより頑健な保護区設定に向けて前進してほしい。

・また、部局内での強固なスクラムも実現のためには必要だ。

・たとえば、海洋のレッドリストの問題がある。ほとんどの市民も知らない魚1種を情報不足種としてリストしたほか全てを普通種にしたり、国際的に管理される種については評価しないことも鳥の場合とは異なる。国会でも問題となったレッドリスト見直し検討を早急にすべきだ。

・また、鳥獣保護管理法における80条の削除も必要だ。2002年に全ての野生鳥類、哺乳類を同法対象としながら、「他の法律で適切に管理されている種」として多くの海生哺乳類が対象外とされている。目的の異なる水産庁が「適切」に管理しているかどうかの検証も行われないまま、対象外にし続けるのは科学的ではないのではないか。

・重要海域選定の根拠となる科学的データが不備であることは、海洋保護区設置にも支障をきたす。

・最後にボン条約の批准を早急にすべきである。2019年から商業捕鯨が開始され、国を超えて移動している可能性のあるクジラが捕獲され、市場流通している。保全と利用を旨とするならば、バランスを欠いた状態である。

 

 

2022年1月 7日 (金)

ストランディングレコード(送付感謝)

昨年末に、2020年に収集されたストランディングレコードが、石川創さんから送られてきた。

氏が鯨研に在籍されていた時に開始されており、下関の鯨類資料室に移られてからも継続して記録されてきたものだ。資料室が閉鎖となり、移動されるということで、ストランディングレコードはストップしてしまうのか、と懸念したのだが、今回は、日本セトロジー研究会(山田格博士が会長)の「日本セトロジー研究」に掲載されることになったそうだ。山田博士はこれまでも座礁・混獲された鯨類の標本を管理されてこられた方で、部分的にストランディングレコードを公表されてきたと記憶しているところで、信頼できる移動先があって本当に良かったと感じている。

一方で、立場の異なる私のようなものに、石川さんがきちんとお送りくださったことに感謝、である。

記録の情報源となっているのは、

1。発見者あるいは観察者からのもの

2。新聞記事、書籍、雑誌ウェブサイト等からの収集

3。学術論文、学会報告などの公表された情報

4。他の公表されたデータベース等からの転載

という収集方法は変わっていないようだ。ただし、下関でのデータが西日本が主であったのに比べ、入手された情報は広がっているように見える。

もちろん、このデータベースが全ての座礁・混獲鯨を網羅しているわけではないが、毎年、夥しい数の鯨類が座礁したり、混獲されたり、また漂着したりしており、必ずしもこのデータベースで原因を究明することはできないかもしれない。

水産庁がHPで公開しているヒゲクジラの混獲数と必ずしも一致しないが、100頭を超えて推移してきたミンククジラの混獲は減少しているのは確かなようだ。

気になるのはスナメリの漂着・死亡数の多さだ。2018−2019では277頭、2020年は238頭と他と比べても飛び抜けている。

沿岸に生息するスナメリは(水産庁のレッドリストでは普通種だが、アジアの東スナメリについてIUCNは絶滅危惧種の1つとしている)、明らかに絶滅を危惧される個体群があり、その生息状況をかつて環境省と水産庁の共同で調査したことがあったと思う。このような調査を是非とも継続的にやっていただきたいものだ。

 

2021年12月 8日 (水)

生物多様性国家戦略の中の海洋

新・生物多様性国家戦略の5年後の見直しは、2007年の4月に準備がスタートした。早速、持った環境省との意見交換会では、その時の生物多様性企画官の亀澤氏に早速新しい戦略についての環境省の意向を聞いた。海洋の保全に関して気になっていた’海洋’の範囲を聞いたところ、当然のように「もちろんEEZまで入ります」という答えだったのに喜んだ。亀澤氏は、のちに局長になられた人で、2019年の象牙問題では国内管理にすごく後ろ向きな姿勢を批判され、ナショジオでは名前まで出されて指弾されてしまったが、この時は、かなり積極的な保全への熱意を示していた。名前に’亀’がつくから、とボン条約批准に関しても条約本体には手をつけられないまでも、個別の協定に踏み込めればと個人的な感想も述べておられたくらいだ。

ついでに言うと、新戦略の時に私がフロアから発言してしまった前例から、第3次から当たり前のようにフロアからの発言も会議の最後にではあるが許されるようになったし、夏の盛りには、傍聴者にもガラスポットに入れられた水が自由に飲めるように配慮するというそれまでにないような開かれた姿勢があった(傍聴許可のメールの末尾に「暑いのでどうぞお気をつけてお越しください」という言葉が添えられていたのはこの時だけだ)地域でのヒアリングも開始された。なんと!私も埼玉会場で、県にはない’海’の保全について、発言する機会をいただいた。団体名もそのままだったので(普通は問題を起こさないよう野生法ネットの名前)、環境省担当者の心意気に感動してしまった。

しかも・・・・・・

第3次の環境省パンフレットを見ていただけばわかることだが、このど真ん中、見開きにはダイナミックな小笠原のザトウクジラの姿が。

http://www.biodic.go.jp/nbsap.html

もしかしたら、例の’悪夢のような民主党政権’であったからかもしれないと思う(確信している?)のだが、環境省との関係もとても良好で、そのまま2008年の生物多様性基本法制定から(同法が国会を通過したことは、神戸でのG8環境大臣会合の場で、最初に自民党の森山議員から伺ったと思う)、名古屋COP10までその関係が維持され、それが条約会議成功の大きな鍵だったと断言できる。生物多様性保全の会議の成功は、単に主催国政府だけではなく、多様な主体、とりわけ、保全に貢献するNGOの協力が欠かせないからだ。

私たちは、民主党内に2009年に設置された「環境施策をNGOと進める」ワーキングチームに協力し、党内の勉強会でのプレゼンテーションを行い、また、その時のCBD事務局長、ジョグラフ氏と民主党の勉強会に協力した。さらに、野生法ネットメンバーを含むCBD市民ネット世話人として、「国連生物多様性の10年」提案では副部会長として環境省・外務省への働きかけを活発に行い、CBD会議の先立つ国連総会で、日本政府がこの提案を行うことに成功した。

海に関しては、世話人としてCBD ネットに「沿岸・海洋生物多様性保全に関わる作業部会」を組織し、その年5月の海洋のシンポジウムでは白山義久氏を講師に招いたり(ちょうどザトウクジラ移動のドキュメンタリーの日本上映が決定して、そのトレイラーについて参加した彼が適任ではないかと推薦した)、7月の海部会のシンポには、CBD事務局の海洋を担当されているジヒュン・リー博士をお招きすることができた。素人の大それた思いつきでやったことが本当にうまく行って、来日してくれた博士には本当に感謝しかない。本来は事務局からの参加は難しかったらしいのだが、ジョグラフ氏が特別に許可してくれたらしい。

また、この時に博士を連れていくつかの関係機関を周り、環境省の渡辺綱雄審議官(当時)との面談も果たすことができた(この機会を通じ、オーシャンズデイに関して日本政府の共催が進んだと私は思っている)。

さらに、会議の前に、日本の魚食に関するさまざまな問題提起を行うパンフレット「海恵」を作成したがこれが大変好評で増刷するほどになった。事務所で行った撮影現場は魚臭さが激しく、ベジの私としては結構これがキツかったが、撮影の方はなんとかうまくいったのだ。

残念なこともあった。部会長をお願いした某研究者に、私の’独走(暴走かな?)’が逆鱗に触れたようで(反捕鯨はテロリストだという漁業関係者からのクレームを受け入れたこともあるらしいのだが)、私の排除し始めたのだ。そのため、せっかく進んでいたPEWとのコラボもダメになり(PEWも反捕鯨認定された)、なんとか海部会としての会議への意見書は出したが、その後は地域の活動がメインにだんだんなってしまった。

 

一方、政府内では内閣府において海洋基本法が2007年秋に制定され(国家戦略の海洋への言及はこのためもあった)、環境省もCOP10に合わせて海洋生物多様性戦略策定と重要海域選定作業に入った。会議では、またオーシャンズデイ・アット・ナゴヤを共催し、イベント後の記者会見で、渡辺綱雄審議官が海洋生物のレッドリスト作りを公表された。2002年の水産庁との攻防からの8年ぶりの悲願が実った瞬間だった。(海のレッドデータがご存知のようにダメダメなのは、渡辺さんの責任ではない)

 

     
COP10海部会の作ったパンフ   第3次国家戦略パンフ         第3次国家戦略の見開きページ




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