IWC69会議をYoutubeで視聴

 IWC69回会議が23日からペルーのリマで開催された。今回私は2000年以来初めて、直接参加を見合わせ、ネットで会議を傍聴した。いいところは、こちらの都合の良い時間に、都合の良い間合いで聞くことができること。困ったところは、まず全体の雰囲気が掴みにくいことに加え、これまで同時通訳に甘えてきたのが、それがないこと。速度を遅くすることと繰り返して聞けば理解できるが、問題は英語以外のスペイン語とフランス語で、字幕を英語にしてみたものの、自動英訳はさっぱり役に立たないことがわかった。CCAMLRがKamalaになってるし・・・なんだよ!

まだ視聴されていない方は是非。

https://www.youtube.com/watch?v=C_WEPoQuCSs&t=8537s

 まず、議長が会議に出席できなかったギニア共和国のディアロ氏に変わり、代理議長として、オーストラリアのコミッショナーのニック・ゲイルス氏が務めた。もともと、科学者としてだけでなく、頼もしい鯨類保全の第1人者である彼の采配は、適切で迅速な判断力と物腰の柔らかさをもって、想像以上に良かった。また、新しい事務局長に就任したマルタ・ロハス・ウレゴ氏はゲイル氏をしっかりと支えており、二人のコンビがなかなか良かった。

議長代理の仕事は、前回問題になった採決における定足数問題の解決だ。投票権はほんらい参加する当該国の信任状があり、3年間の会議参加費の支払いを行なっている国が持っているところ、前回、投票の3分の2の賛成票を必要とする附表修正、サザン・オーシャン・サンクチュアリの採択を阻止しようと、捕鯨応援国17ヵ国が投票ボイコットという手段に出て投票が不可能になったことを受け、いくつかの修正案が提案された。支払い義務が2年間になり、支払いの確約が取れれば例外もあるということらしい。しかし、どの修正案にも反対する国があり、最終的には議長代理であるゲイルス氏が手続き規則の解釈をした議長判断で進められうことになった。彼の手腕が発揮された瞬間だった。そして、実際には、その(休憩を含む)一つのアジェンダの間の議事の参加者をまず定足数と定め、国を代表して投票に参加するための信任状と支払い義務を満たしているを国の確認が行われた上で、投票が行われることになった。最初はわかりにくいなど繰り返しの質問に辛抱強くこたえ、まず、議題とそれに対してYES,NOがどのようなことかを説明、会議出席している参加国の信任状を持つコミッショナーであることの確認が行われ(事務局長が一つずつ確認作業を行う)、その上で採決にあたり、さらにその国の代表者として採決に加わっているかどうか事務局長が確認し、その上で賛成、反対の意見を言ってそれを事務局長が繰り返すという手順がとられた。とてもまだるっこしい方法だが、重要事項の決定には不可欠に思われた。

 附表修正と決議に関しては、4日目の午後に行われた。今度こそと期待していたサザンオーシャンサンクチュアリは、40対14(棄権3)という結果で、1票という僅差で敗れてしまったのは残念だった。クジラのサンクチュアリは、クジラだけでなく、その元にある生物多様性の保全にも役立つわけで、反対する国にもそれなりの理由があるのだろうが、さらなる挑戦を続けて欲しい。

 今回提出された決議案は5つ。二つは最終的には合意が得られないので70回会議まで検討を継続するとした捕鯨再開を目指した「食糧安全保障」と「捕鯨一時停止の解除のための保全及び管理プログラムの実施」。3つはEUを代表してハンガリーから出された「CCAMLRとの共同」、「CBD昆明・モントリオール議定書及びBBNJ(国家管轄権外区域における海洋生物多様性 )との共同」、「商業捕鯨実施における法的な義務」で、前者2つは合意されたが、最後は投票になり、過半数の賛成があって採択された。この法的な義務の決議案に対して、非参加国日本からの唯一の発言があった。森下丈二氏は、この提案が案に日本の捕鯨を指しているものとし、これに関して誤解があるようだと切り出した。日本は全ての科学的な土台で捕鯨を行い、その情報は全てIWCに提供している。商業捕鯨の捕獲枠は1995年に会議で合意されたRMPに基づいて計算されており、持続的でないという指摘は当たらない。それに日本はIWC参加国でもない・・・ナガスについての言及はなかった。

ナガスについてはいつ、どこから出されるかと思っていたら、2日目の科学委員会の報告の中で、北太平洋のナガスクジラの包括的評価が行われたのは1976年だとわかり、現在、捕獲が行われているのだから、早急に評価し直すべきではないか、という質問がイギリスから出た。今回、日本が60頭という捕獲枠を出したのに対して、その批判が各国政府に共有されていたのを受けてのことだ。科学委員会の答えは、科学委員会の作業にはすでに優先順位があり、すぐにはできないというものだったのだが、それに対して議長代理が、コミッションが優先順位の検討をするための科学リエゾングループを組織したらどうか、という提案を行った。そのメンバー(オーストラリアがコンビーナー、他はブラジル、南ア、ポーランド、ノルウェー、アイスランド、アメリカ、追加として西アフリカのどこかとアジアー多分韓国)も決まり、その対象として北太平洋のナガスクジラの包括的な検証が取り上げられ、70回会議に報告される予定だ。これには、ナガスクジラの捕獲枠設定に一貫して疑問を呈し続け、最終日にNGOとしてこの枠がどれほど問題があるか発言した真田康弘氏の功績もあると私は感じた。

もうひとつ、議長代理の仕事として、各自の発言時間は3分間に限られ、それ以上はマイクが切られるという手続きがとられた。そういえば前回、アンティグア&バービューダがだらだらと22分というまるで知らない人たちに講釈でもしているような長口舌を行なったのだ。この裁量で会議は粛々と進み、NGOが発言する機会も増えたと思う。(ついでに。議長代理が、今回会議の締めくくりの中で、多様で重要な意見を聞くチャンスと、NGOの存在を評価したことを特記しておきたい)

・その他今回会議で以下のような話題があった。

先住民生存捕鯨の捕獲枠は科学委員会の承認のもとの6年間固定する。

各国の参加費は、2025−2026年の2年間は3%の増加で、その後の2年間は5%を予定。

次期の議長は今回の議長代理であるオーストラリアのニック・ゲイルス博士、副議長はベニンのウルベイン・ブリト博士。

次回開催国なオーストラリア。

詳細については、IWCwebサイトのdaily report で見ることができる。

https://archive.iwc.int/pages/view.php?ref=22465&k=

 

 

2024年6月13日 (木)

なんちゃって審議会だった・・・

6月11日に水産政策審議会が開催された。

審議内容で不可欠なナガスクジラの捕獲枠設定のプロセスを報告する資料は、審議会開催1時間前に水産庁の捕鯨の部屋に公開され、審議委員は坂本捕鯨室長から口頭(とパワポ)で説明を受けただけだった。ま、審議委員といってもほとんどが業界関係者で、鯨類はおろか、野生動物の生態の専門家はいなかったのだから、もともとそんな専門的なペーパーなど渡す必要はないと水産庁は考えたのかもしれない。

https://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/attach/pdf/index-72.pdf

https://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/attach/pdf/index-69.pdf

「時間がなかった」という説明はあったが、直近のデータが含まれるわけでもなく、鯨研の作った捕獲枠を決めるプロセスの資料をもとに、海外の研究者のパネルの報告がなされたのは昨年の秋だから、どういう時間がなかったのか。

報告書を見たら、科学に疎い私でさえ「おや?」と思うところが何箇所かあった。特に、(日本に甘い)パネルの研究者さえ懸念を示し、改善を求めているところについて、審議会では報告されず、有耶無耶のままスルーされてしまい、水産庁の提案した捕獲枠60頭(ー混獲予想1頭)が承認される結果になった。日本政府は、常に「IWCの管理基準の沿った捕獲枠」と繰り返し、ほとんどの人がそれを信じ込んでいるようだが、IWCは公式には北大西洋のナガスクジラの情報は存在するが、北太平洋ナガスクジラの推定個体数も個体群情報もない。

日本は、北太平洋に4つの個体群が存在するとし、今回捕獲対象となる捕獲枠算出の基準となる推定個体数は、日本の太平洋側の沿岸からアリューシャンに渡る広い海域のもので、19、299頭だという。しかし、今回の捕獲対象は、EEZ内だけ。資料となる鯨研の報告では、EEZ内の生息数推定は存在せず、あたかもその広い海域をそこに属する個体群全てが広く回遊しているかのように見せかけ、パネルの懸念とするもしかしたら、そこにいるクジラは東の方に移動していないかもしれない。その場合は、60頭を捕獲し続けると4年間で40%もいなくなってしまうと懸念しているのだが、それとスレスレの質問に対して、坂本室長は100年とっても大丈夫な数とか何とか誤魔化してしまった。

そこで私は思った、「時間がなかった」という言い訳は、実はこの懸念について質問されるのを避けるためではなかったか!

出される意見もかなりトンチンカンで、捕獲枠のプロセスに関する質問は僅かで、海外に非難されないよう、あるいは、ナガスクジラがたくさん魚を食べていることを海外にちゃんと説明して、とか、現在の捕獲枠では半年で操業が終了しちゃうから、通年できるようにして、とか、開催する側も参加者も真剣に議論するつもりなんか全く感じられない審議会だった。

5月7日から開始されたパブコメに関しては、冒頭で坂本室長は1000件以上のコメントがあっ他といくつか紹介したが、じゃ、そのコメント数は賛成がどれくらいで、反対はどれくらいなのか、それが今回の決定にどのように反映されているのかという説明はされなかった。しかも、会議の前に関係事業者に説明し、承認を得たと恥ずかしげもなくいっており、これでは最初から決まったことのアリバイ作りではないのか。審議委員もこうしたことに腹が立たないほど腐った人たちなのか。

これも全て税金、と思うと怒りを通り越してため息さえ出ない。

2024年5月10日 (金)

ナガスクジラの捕獲、なぜ??

政府が休み明けの9日に資源管理方針の一部を変更すると発表した。ミンククジラ、ニタリクジラ、イワシクジラに加え、ナガスクジラを商業捕鯨の対象に付け加えるのだそうだ。

 ナガスを捕獲したいという話は以前から出ていて、何しろ重さで言えばミンククジラの5トンに比べるとその8倍の40トンにもなるので、肉を得る上では効率が良いクジラだ。地球上で一番大きなシロナガスクジラに次ぐ大きさを持っているので、商業捕鯨全盛期にはシロナガスクジラの激減で捕獲できなくなると次に狙われた。20世紀における商業捕鯨によって捕獲されたクジラたちは少なくとも290万頭と言われ、その多くがナガスクジラとマッコウクジラだったとNATUREに書かれている。

https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v12/n6/20%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%81%AE%E7%9C%9F%E3%81%AE%E6%8D%95%E9%AF%A8%E9%A0%AD%E6%95%B0/63802

世界自然保護連合が毎年更新している野生生物のレッドリストでは、回復傾向にあるとはいえ、まだ「危急種」だ。報道では、政府は「北半球のナガスクジラは豊富だ」と主張しているが、どのように’豊富’なのかは、政府関係の資料等を見ても全く出てこない。政府が’大丈夫’といって大丈夫なことがこれまであっただろうか?原発?災害対策?貧困対策?ああ。あれか、政治倫理とマイナカード。どれをとっても「大丈夫」だなんていってほしくないものだし、報道する側だってそういう問題についてはかなり批判的に書いているのでは?クジラについてもメディアたちは、ちゃんとその根拠を聞いて書いて欲しいものだ。

許可の根拠はむしろ一部議員などによる圧力かもしれないし、また、もともと経営が危ういのに新しい船を建造した捕鯨会社(加害漁業協力財団からの借金で利息はゼロ)の立て直し、あるいは総額51億円という捕鯨関連の補助金への後ろめたさからかもしれない。

けれども、現在の鯨肉需要はかつてのようではないにもかかわらず、海外から鯨肉を輸入したりして今でも余剰があるのに新しい捕獲対象を付け加える理由はどこにもない。

この件については形ばかりのパブコメを実施するそうなので、ダメ元でも「ダメ、絶対ダメ!」と意見を送って欲しいものです。

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003913&Mode=0

2024年3月28日 (木)

国際海底機構(International Seabed Authority)

国際海底機構は、国連海洋法条約に基づき、1994年に設立された、どこの国の管轄権も及ばない、深海の保全と管理を目的とし、参加国の議論で国連海洋法条約のもと、すべての人類の共有財産とされている深海の利用についての規制を進めている(外務省は「管理を主な目的」としていることに注目)。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaiyo/isba.html

 

外務省によると「3種類の深海底鉱物資源について概要調査・探査規則をそれぞれ採択した(マンガン団塊:2000年採択、海底熱水鉱床:2010年採択、コバルトリッチクラスト:2012年採択)」しているが、NGOが懸念するその保全についての言及はない。また、どうも、日本からの参加は

「これらの規則に従い、マンガン団塊については我が国の深海資源開発株式会社(DORD)を含む19のコントラクターが、海底熱水鉱床については7のコントラクターが、コバルトリッチクラストについては我が国の独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を含む4のコントラクターが探査活動中」

とあるように、深海の資源採掘を進めたい人たちのように見える。

実際、日本では会議のメディア報道は見当たらないが、マンガンの採掘、熱水鉱床、コバルトリッチクラスとなどへの期待はたびたび現れる一方で深海の生物多様性についての言及は見られない。

しかし、海底の採掘による生物多様性へのダメージは、世界115のNGOより強く懸念が表明されており、会議の中でも強い規制を求めている。

https://deep-sea-conservation.org/

https://deep-sea-conservation.org/about/members/

会議は、参加国の拠出金で賄われており、日本は中国に次いで2番目の拠出国(アメリカは参加していない)ということだ。

日本の立場としては、「資源の貧しい日本」で、世界6番目に広い排他的経済水域での鉱物採掘は魅力的なのはわかるが、ここでも相変わらず保全への意思が見られないことは残念だ。

2024年1月19日 (金)

中央環境審議会で「今後の海底下への二酸化炭素回収・貯留に係る海洋環境の保全の在り方について」が議論されていたんだ・・・

https://www.env.go.jp/content/000190902.pdf

 

苫小牧でのCCSの実証実験について、気になっていた。政府が補助しなければ採算が取れないのではないかと思っていたが、このような議論があるのは、考えてみればまあ、おかしくはない。

ただ、CO2削減に関して、こうした大がかりなプロジェクトをやってればなんとかなるという感じがあり(これだけではないが)相変わらず、前のめりなのが気になる。

クジラは誰のものか?

『日本の太地沖で捕獲される小型鯨類の頭数の減少は、商業捕鯨で記録された種と同じパターンをたどっており、最も価値の高い種が先に枯渇していることを示すことが明らかになった。1982年以降、コビレゴンドウの漁獲量は漁獲枠の3359%の間で推移し、ピーク時(198085年)には11%まで減少した。提供されたデータは、日本の追い込み漁に関与する複数種の沿岸個体数が減少しているという当委員会の以前の懸念を補強するものである。著者らは、より予防的な管理アプローチを実施すべきであると強く提案した。』IWC科学委員会2023年報告よりの抜粋)

イルカを捕獲する漁業は、古くから存在した。しかし、戦中戦後の食糧事情から、その捕獲等数は増加いたため、1990年から船の管理が始まり、1993年に水産庁による捕獲枠が設定されて、関係同県に通知されるようになった。その後、2007年に管理が不十分だと考えた当時の担当者により、捕獲枠が改定されたが、事業者の意向が完全には払拭されないまま、5年をかけて漸減、その後は2017年に2種が新たに加えられた。現在の捕獲枠の10種で10920頭である。

捕獲枠が大きいのは、突きん棒猟でのイシイルカの捕獲数による。イシイルカの突きん棒猟は、鯨肉の代替物としてカジキマグロの突きん棒をしていた漁業者が参入したことで増加し、1993年に設定された当時17,700頭に設定されており、たびたびIWCでも問題とされた。2007年に改定されたときに16,875頭になりその後漸減しているが、現在でも総数8534頭の枠が北海道、宮城、岩手に与えられている。しかし、実際の捕獲頭数は東北大震災以前から減少している。過去10年間の記録では、北海道は2017年に745の捕獲枠に対して17頭のみ、青森は実績がないため捕獲枠がなく、岩手は枠7649頭に対して11年に1945頭、以下405頭、1235頭、1560頭、1068頭、1357頭、864,818,925,502頭、宮城は141頭の枠で、実数が8,0 18、34、32、1、24、15、8.3、9である。

一方で、冒頭のIWC科学委員会の報告にある太地における追い込みで捕獲実績で一番多かったのは2013年の1239頭で最小は2017年の822頭、1870頭の捕獲枠に達している年はない。太地では、西日本への販売をはじめとしたコビレゴンドウ(マゴンドウ)の需要が大きかったが、2012年に捕獲枠101頭を超える172頭を捕獲した他は低位で推移し、ここ数年は枠の10%程度の捕獲である。このため、漁業者の訴えに応じて2017年には新たにシワハイルカとカズハゴンドウ合わせて320頭の捕獲枠追加があった。2007年の捕獲枠の改訂に際して「沖合の別の個体群が見つかった」とされて枠の増加があったオキゴンドウは、2011年に17頭捕獲されたきりでその後は一頭も捕獲できていない。一方で、もともと利用されてきたスジイルカは取れる時は捕獲枠をはみ出して捕獲されている(太地におけるスジイルカ追い込みの捕獲枠450頭に対し、2012年508頭、2013年498頭、2016年625頭)。

一体、水産庁の捕獲枠に管理の意味があるのだろうか?

脱退後の商業捕鯨についても同じことが言える。ミンククジラの捕獲は、開始したときは母船式(共同船舶)と基地式(沿岸)で53頭の枠があり、44頭が捕獲されている。その後は母船式はイワシクジラとニタリクジラ捕獲に絞られ、ミンククジラの捕獲は基地式捕鯨4社により、2020年には95頭(枠112)、2021年には91(枠120)、2022年には58頭(枠107)、しかも三陸で捕獲が難しくなり、今では主に道東でおこなわれている。漁業者はこの不漁を温暖化による餌の北上に伴う移動が原因としているが、それを確認できるような調査はされていない。ミンククジラの生態に関して言えば、繁殖する南方海域の特定もできておらず、また、個体群の構成についても、現在認められているO個体群、J個体群のほか科学委員会での議論ではY(中国よりの海域)と沿岸海域に生息する可能性のあるP個体群についてもまだ「いない」と断定できるだけの調査結果はない。基地式捕鯨の、調査捕鯨から商業捕鯨への移行は、2019年以前から関係者の中でさえ疑問視する向きがあった。現在も母船式、基地式いずれも補助金によって生きながらえている状態と言える。

水産庁の管理不全は、漁業者にとって不都合なだけでなく、私たちにとっても大きな問題だ。なぜなら、イルカやクジラをはじめとする野生生物は、それを利用する一部のものの所有物ではなく、国を超え、世代を超えた人々のものであり、私たちがまたそれらが固有の権利を持つと考えることを妨げるものではないのだから。

政府やその同調者たち、その代弁者たちに腹が立つのは、本来であれば沿岸の野生生物たちをまず守り、その存続を真剣に図るべき立場の人たちが、それを怠る方便として、保護を訴える諸外国や人々を非難し続けることだ。特にIWCに深く関わりのある某教授が繰り返しその立場を批判している本を出版しているが、一度も沿岸の生物保全について語ろうとしたのを聞いたことも見たこともないことだ。

 

 

2023年10月31日 (火)

アイスランドの捕鯨の是非と現状についての記事

この記事を掲載したMongabayは、環境系のwebニュースを配信するところだ。この記事に関しては、「Last whaling stasion」を制作した映像作家の意見であり、同ニュースサイトの公式見解ではないとしている。一方で、投稿者の意見を以下のように紹介する。

=「捕鯨のパラドックスは、功利主義的世界観とカント主義的世界観の間に内在する矛盾である。もしあなたにとって、選択するが重要だと考えるのであれば、今捕鯨を終わらせることが、倫理的、道徳的、哲学的にできる唯一の選択なのです」と彼は主張する。(引用ここまで)

日本国内においては、残念ながら捕鯨を積極的であれ、消極的であれ容認する姿勢が主流で、異なる視点での解説あるいは主張、または両者の冷静な議論が現れない。このブログでは、たびた日それを試みてはいるものお、不十分であることを反省している。まとまった俯瞰的な視点を示す必要があると再認識しているところだ。

https://news-mongabay-com.cdn.ampproject.org/c/s/news.mongabay.com/2023/10/icelands-whaling-paradox-commentary/amp/

本文は英語で書かれているが、最近はさまざまなサイトで翻訳が可能なので、わざわざここに記す必要はないと思われるが、同ブログでも紹介しているアイスランドにおける本年度のナガスクジラ猟の紆余曲折と来年度からの猟の可否、そして政府内での駆け引きとその継続の予測など、読み応えのあるものになっている。

2023年9月15日 (金)

アイスランド捕鯨一時停止

アイスランド食品獣医局(MAST)は、9月7日に行われたクバルル社による捕鯨が、新たな動物福祉の手順に違反したとして、捕鯨船クバルル 8の操業を一時停止する決定をした。

MASTのウェブサイトに掲載されたプレスリリースによると、9月7日にクバルル8号から発射された最初の銃弾が「指定されたターゲット・エリア外」でナガスクジラに命中し、その結果、ナガスクジラが直ちに死亡しなかったことが監視作業によって明らかになったという。新たな手順では

このクジラは直ちに後続の射撃で死に至らなければならなかった。しかし、追撃は約30分後まで行われず、ナガスクジラはその射撃の数分後に死亡した。この遅延は動物愛護法と延縄漁業規制の両方に対する違反であると食品獣医局は判断した。この操業停止処分は、是正措置が実施され、食品獣医局と漁業局が確認するまで続く。

 

https://www.icelandreview.com/news/whaling-vessel-suspended-for-violating-welfare-protocols/

2023年9月 2日 (土)

フランスの水族館で生まれたシャチの家族が日本に?

須磨海浜公園内に水族館(神戸須磨シーワールドhttps://kobesuma-seaside-park.jp/pdf/230516_suma-naming-hp.pdf)

が新たに建設されることを懸念してきたが、最新の情報が入ってきた。それによると、フランスのマリンランド・アンディーブから4頭のシャチが日本に移送され、そのうちの何頭かは須磨シーワールドで飼育される可能性がある。

(情報簡単翻訳 ー情報もとはhttps://www.facebook.com/oceans.orcas

関係筋によると、マリンランド・アンティーブのシャチの移送は、2024年1月から2月の冬季閉鎖期間中に行われる予定だという。このことは、輸送を証明する航空会社からも確認されている。4頭のオルカ、ウィキー、イヌーク、モアナ、ケイジョ(いずれも血縁関係にある)は日本に輸出され、3つのパークに分散されるようだ:


- 鴨川シーワールド:4頭のメスのオルカがいる: ラン、ラビー、ララ、ルナ
- 名古屋港水族館: メス2頭、オス1頭:ステラ、リン、アース
- 神戸須磨シーワールド  


神戸須磨シーワールドはまだオープンしていないが、鴨川シーワールドを所有するグランビスタグループが開発中である。
2023年9月以降、オルカスタジアムへの一般入場は週末のみに制限される。MLAのオルカはすべて同園で生まれ、これまで一度も移送を受けたことがない。
フランス国内の活動家グループ(@cest.assez.associationなど)は、移送を阻止するための法的手段を模索するとともに、政府に支援を求めている。MLAはまだ許可を得ていないため、十分な世論の圧力があれば、MLAの決定を覆すか、許可を拒否することができると期待されている。
彼らの努力を支援するために、@cest.assez.associationのバイオグラフィーとストーリーにリンクされている嘆願書に署名してください。

(ここまで)

フランスでは近年、鯨類の水族館飼育が動物福祉の観点から問題視され、新たな飼育はできないことになった。また、現在飼育中の鯨類についても、飼育継続を望まない方向になっている。そのこと自体は喜ばしいことだが、飼育されてきた鯨類が今度は異なる飼育施設にうつされる懸念も大きい。

2023年9月 1日 (金)

アイスランド、ナガスクジラ猟再開か

環境保護団体、EIAの声明によると、動物福祉の観点から6月から8月末まで中止されていたアイスランドのナガスクジラ猟が再開される可能性が出てきた。6月の勧告で、アイスランドの捕鯨は今後中止されるという観測が広まっていた。しかし、アイスランドのスヴァヴァードッティル食料・農業・漁業相は、「漁具、漁法、監視の強化に関連する厳格な規制のもと」での捕鯨の継続を認めた様子だ。

アイスランドの捕鯨に関しては、レオナルド・ディカプリオ、ジェイソン・モモア、ヒラリー・スワンクら俳優や、ジェイムス・キャメロン、ジェイン・カンピオン、ピータージャクソンなど、著名なディレクターが猟の再開に反対する書簡を食料・農業・漁業相に送付したそうだ。その中では、アイスランドで今後展開される予定だった総額で1.5億ドルの複数の関係者によるフィルムプロジェクトへの投資が中止される可能性が示唆されている。

https://www.icelandreview.com/news/true-north-demands-injunction-against-whaling-company/

True Northというアイスランドのフィルム会社が、捕鯨の再開に対して停止の訴訟を起こしたという情報も入ってきている。

«ロリータ=トキタエ、解放目前に逝去